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【7月23日付編集日記】出処進退

07/23 08:45

 幕末の越後・長岡藩の家老、河井継之助。戊辰戦争で新政府軍に追われ、只見町で最期を遂げた人物は「出処進退」の4文字が人生で最も大切だ―と説いた

 ▼「進むと出ずるは上の人の助けを要さねばならないが、処(お)ると退くは人の力をからずとも自分でできる」。司馬遼太郎の長編小説「峠」には、30代前半の継之助が藩から大役を依頼された際、「退いて野(や)に処る」とかたくなに断る場面がある。身の処し方は自ら決める―との信念を貫く男として描かれた

 ▼バイデン米大統領が大統領選からの撤退を表明した。決戦まで100日余りに迫るなか、現職大統領が再選断念を余儀なくされた。先日のトランプ氏の銃撃事件に続き、極めて異例の選挙戦だ

 ▼6月の討論会では言葉に詰まるなど精細を欠き、最近は自力で歩くことさえままならなかった。民主党内で交代論が強まっても、本人は再選に意欲を示していただけに、苦渋の決断だったはずだ

 ▼部下へのパワハラを告発された知事、有権者に違法に香典を渡した政治家など、身の処し方を真剣に考えなければならない人は国内にもいる。「最善の判断をするとの思いだろう」とコメントしたリーダーも4文字が頭をよぎっただろうか。

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