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【7月24日付社説】米大統領選/レッテル貼りの応酬やめろ

07/24 08:10

 大統領選まで100日余りに迫る中で、対決の構図が大きく変わった。政治的な分断を乗り越える転換点とすることが重要だ。

 バイデン大統領が、大統領選からの撤退を表明した。現在81歳と高齢で以前から心身の衰えが懸念されていたが、6月の討論会で言葉に詰まるなど精彩を欠いた姿を露呈し、撤退を求める民主党内の圧力が強まっていた。

 対する共和党は、トランプ前大統領の暗殺未遂事件を切り抜けて勢いを増した。バイデン氏が撤退を決断した要因の一つには、勝敗を分ける激戦州全てでトランプ氏に敗北する見通しを示した世論調査の結果があった。

 バイデン氏は任期を全うする考えだが、再選の断念で政権のレームダック(死に体)化は避けられない。国内外の経済や安全保障など幅広い分野への影響を最小限に食い止めることが求められる。

 後継候補としてバイデン氏が推薦したハリス副大統領には、移民問題で成果を出せていないなどの批判がある。当初、バイデン氏が高齢を押してまで再選を目指したのは、実績の乏しいハリス氏では勝てないとの共通認識が党内にあったからにほかならない。

 そのハリス氏が早くも、党候補の指名獲得に必要な数の代議員の支持を得たと、米主要メディアが報じている。対立候補と目されていた議員らも相次いでハリス氏支持を表明しており、8月の党大会での指名が有力視されている。

 バイデン氏撤退の混乱を早期に沈静化して挙党態勢を再構築したい党の考えだろうが、拙速な候補者選びで有権者の支持を広げられるかは疑問だ。ハリス氏は、大統領候補として十分な資質を備えていることを示す必要がある。

 トランプ氏は、撤退を表明したバイデン氏を厳しく批判した。暗殺未遂事件後、一時は国民の融和を訴えていたが、以前の攻撃的な姿勢に戻ったようだ。最近の集会ではハリス氏を名指しし、人格を否定する発言を繰り返した。

 一方のハリス氏は立候補の表明後、トランプ氏を批判し「自由と慈悲の国家か、恐怖と憎悪の国家かを選ぶ選挙だ」と強調した。程度の違いこそあれ、政敵にレッテルを貼って対立をあおるような手法は両氏とも変わらない。

 米国民の分断を招いている移民や人工妊娠中絶の問題、生活を圧迫するインフレ、不安定な国際情勢への対応など課題は山積みだ。自由と民主主義を体現し、世界を先導してきた超大国のリーダー候補として、両氏には冷静な議論を期待したい。

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