パリ五輪が開幕した。世界各地に戦火のあるなかでの開催となる。五輪憲章は「平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる」と理念を定めている。競技に臨む選手の姿や大会運営を通じて、その理念が体現されることを強く願う。
前回東京大会からの3年の間、世界は揺れ動いた。一昨年の北京冬季五輪閉幕直後に、ロシアがウクライナに侵攻、昨年にはイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まり、いずれも休戦の見通しは立っていない状況だ。
国際オリンピック委員会(IOC)は、ロシアと同盟国ベラルーシについては国としての参加を認めず、積極的に侵攻を支持しないなどの条件を満たした場合のみ、個人の中立選手として出場を認めた。一方、パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けているイスラエルについては、参加に問題はないとの考えを示している。
戦闘のきっかけがハマスによる攻撃にあったとはいえ、現在は軍事力で大きく勝るイスラエルがほぼ一方的に攻撃を行っている。ロシアなどとの扱いが異なり、一貫性を欠いている。平和の祭典を掲げる五輪が武力による侵攻に対して、対応の基準を使い分けていると各国や地域に受け取られかねないものであり、残念だ。
今大会は、新型コロナウイルス感染症により無観客となった東京大会と異なり、観戦が可能となった。世界的に高い人気を誇る観光地での開催でもあり、多くの人でにぎわうことだろう。
開会式直前には、現地の高速列車TGVの路線網に対する大規模な破壊行為があった。現段階で詳細は不明だ。世界の注目を集める五輪期間中、テロの危険性が高まるのは否めない。治安当局は厳重な警戒を続けてほしい。
大会には本県関係の選手も多数出場する。なかでも活躍が見込まれるのが、富岡高卒のそろうバドミントンだ。混合ダブルスの渡辺勇大、東野有紗両選手は東京大会の銅メダル獲得以降も世界トップクラスの成績を維持しており、今大会もメダルが有望視される。初出場となる女子シングルスの大堀彩選手(会津若松市出身)、男子ダブルスの保木卓朗、小林優吾両選手のプレーも楽しみだ。
自転車トラック競技男子の窪木一茂(学法石川高卒)、競泳男子の松元克央(いわき市生まれ)の両選手、バックアップメンバーを含めJFAアカデミー福島出身7人を擁する女子サッカーなどにも熱い声援を送りたい。