パリ五輪のバドミントン混合ダブルスで、ともに富岡高卒の渡辺勇大・東野有紗組(BIPROGY)が3位に入り、3年前の東京五輪に続き銅メダルを獲得した。2大会連続でのメダルは、バドミントン日本勢として初の快挙だ。県勢選手として今大会で第1号のメダル獲得でもある。偉業を成し遂げた2人を心から祝福したい。
準決勝で世界ランク1位の中国のペアにストレートで敗れたが、同2位の韓国ペアとの3位決定戦は随所に息の合ったプレーを見せた。第1ゲームを21―13で先取すると、第2ゲームは粘る相手とのしぶといラリーが続いた。東野選手はネット際でのプレーがさえ、渡辺選手は縦横無尽に動いて強打を次々と決め、勝利をつかんだ。
悲願の金メダルを逃した悔しさが残るなか、メダルの懸かった試合の重圧は相当なものだったはずだ。東京五輪の快挙から3年間、思うようなプレーができなかった時期もあったという。
それでも厳しい練習に耐え、国際大会などで経験を積み、ペアの成熟度や修正力を高めてきた。渡辺選手は「色は一緒だけど、確実に成長できた3年間だった」と語ったように2人の進化を証明した試合であり、称賛に値する。
渡辺選手は東京都、東野選手は北海道の出身で、富岡一中、富岡高で6年間、バドミントンに打ち込んだ。東野選手が1学年上で、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で富岡町から猪苗代町に拠点を移してからペアを組んだ。
結成13年目。混合ダブルスの歴史を塗り替えてきた2人は「第二の故郷」である本県にいつも感謝の気持ちを示している。今年1月の本紙の新春座談会でも「今の私がいるのは福島での6年間があるから」(東野選手)、「恩を少しでも返せるよう活躍し、県民の皆さんに勇気や感動を届けたい」(渡辺選手)と語っていた。
今大会前には猪苗代町を訪れ、町民や子どもたちに活躍を約束した。パリ五輪での最後まで諦めない2人の熱いプレーは、富岡、猪苗代の両町民だけでなく、多くの県民の心に響き、大きな励ましを与えてくれた。2人に感謝の気持ちを伝えたい県民は多いだろう。
現在休校中の富岡高の流れを引き継いだ、ふたば未来学園高のバドミントン部は今夏の全国高校総体(インターハイ)の男子団体で準優勝するなど、2人の活躍は後輩たちの刺激となっている。
日本、そして福島の「ワタガシ」の後を追うように、混合ダブルスの分野で活躍するペアが本県から誕生することを期待したい。