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千葉玲海菜、経験を糧に パリ五輪・なでしこ敗退、穴埋めたスーパーサブ

08/05 08:40

 【パリ=報道部・佐藤智哉】「福島」育ちのなでしこが果敢に立ち向かった。3日に行われたパリ五輪サッカー女子準々決勝で五輪最多優勝を誇る米国を追い詰めた日本。激闘に敗れて4強入りは逃したが、本県関係選手の活躍が光った。

 千葉、全試合に出場

 試合終了の笛がむなしく響いた。延長後半開始から出場したFW千葉玲海菜(れみな)(25)=アイントラハト・フランクフルト、いわき市出身=はピッチに倒れ込み、悲しみの中で勝者の歓喜を見つめた。終了間際には強引にシュートにいったが捉え切れず「点を取らないといけない状況だった。実力が足りなかった」と唇をかんだ。

 当初はバックアップメンバーでの選出だった。しかし開幕直前にルール変更があり、試合ごとにバックアップを含めた22人から登録メンバー18人を選べる運用となり、出場機会が巡ってきた。

 負傷者が相次いだチーム事情もあって全4試合に途中出場。逆転勝利を挙げた1次リーグのブラジル戦では、本職のFWではなく、ウイングバックもこなすなど”スーパーサブ”としての役割を全う。ピッチ外では、重いボトルケースを率先して運ぶなど、献身的にチームを支えた。

 ただ、出場時間が限られる中、FWとして得点を奪えず「まだまだ、自分に課題があった」と千葉。1月に海外挑戦を決断して以降、屈強な選手にもまれながら世界と戦う自信を付けてきたが、満足できる結果を得ることはできなかった。

 「五輪の経験も、これからのサッカー人生に生かしていきたい」。思い描くのは3年後のブラジルワールドカップ、4年後のロサンゼルス五輪で「代表の中心選手として活躍する姿」だ。初の夢舞台を踏んだ25歳は、この悔しさや経験を糧に次のステップへと進む。

 アカデミー勢、確かな足跡

 JFAアカデミー福島出身の3人も奮闘した。本県で東日本大震災を経験したDF北川ひかる(27)、DF守屋都弥(みやび)(27)=ともにINAC神戸=は、ウイングバックで先発出場した。右サイドの守屋は「世界の厳しさを痛いほど感じた」と涙し、さらなる成長を誓った。

 守屋が楢葉中2年、北川が同1年の時に震災が発生。チームは避難を余儀なくされ、2011年4月に静岡県御殿場市で活動を再開した。この年の7月には、ドイツワールドカップの決勝で、なでしこジャパンが米国を破り世界一を獲得。不安な日々を過ごしていた選手たちの励みになった出来事だった。

 3日の準々決勝では、代表に憧れを抱いた「あの時」の再現を狙ったが、かなわなかった。石川県出身で能登半島地震の被災者への思いも胸に臨んだ北川は「本当はメダルを持って被災地に足を運びたかった」と言葉を振り絞った。

 試合には、DF古賀塔子(18)=フェイエノールト=も先発出場した。最年少で臨んだ期待の大器は「体を張って守るというのは通用した。さまざまなポジションでも自分のプレーが出せるような選手になりたい」と確かな足跡を残した。


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