【パリ=報道部・佐藤智哉】日本の「ワタガシ」がまた新たな歴史を築いた。2日に行われたパリ五輪バドミントン混合ダブルスで銅メダルを獲得した渡辺勇大(27)、東野有紗(28)組=BIPROGY、富岡高卒。ペアとなって13年。2人が紡いできた時間は、バドミントン日本勢で史上初となる2大会連続のメダル獲得という形で結実した。
準決勝では世界ランキング1位の中国ペアに敗れ、目標としていた金メダルへの道を絶たれた。「夜は眠れなくて。でも次の日に勇大君の覚悟の表情を見た時に自分も切り替えないといけないと思った」と東野。最後の力を振り絞って臨んだ3位決定戦では、世界ランク2位の韓国ペアに対して息の合ったプレーで応戦し、表彰台への可能性を信じて勝負に徹した。勝利が決まり、重圧から解き放たれた2人はコートに倒れて喜びをかみしめた。
2人の強さの裏には絶妙な関係性がある。富岡一中でペアを組んだ時から呼び方は変わらない。1学年上の東野が渡辺を「勇大君」と呼ぶ一方で、渡辺は「先輩」と呼ぶ間柄。一緒に食事に行ったことは一度きりで、普段の遠征先では「お互いに何を食べているか分からない」と、プライベートには干渉しない。ただ、コートでは違う2人がいる。
「家族よりも家族」。東野がそう渡辺を評するように、コートの上では濃密な時間を過ごしてきた。特に東京五輪からの3年間は「金メダル獲得」という一つの目標が2人の絆をさらに強くした。
「話さなくても分かることもあるが、それが100%じゃない。真逆のことを相手が思っている可能性だってある。細かいことでも言葉にすることを大切にしてきた」と渡辺。3年前は男子ダブルスと兼任していた渡辺が、混合ダブルスに注力したこともあり、2人の会話は増えた。呼応するように試合中の修正力は自然と高まり、ペアとしての成熟度も増していった。
メダルの輝きは3年前と同じだったが、積み上げた努力の分だけ、重みのあるメダルとなった。だからこそ2人は自信を持って言えた。「3年間で確実に成長してつかむことができた銅メダルだ」
富岡から熱い応援
3位決定戦に臨んだ渡辺勇大、東野有紗組を応援しようと、富岡高同窓会と双葉のオリンピック選手を支援する会、富岡町は2日夜、町文化交流センター「学びの森」で試合観戦会を開き、来場者が活躍を見守った。
約30人が来場し、ハリセンを鳴らしたり、選手の名前が入ったタオルやうちわなどを掲げるなどして応援。得点が入るたびに「おー!」「すごい!」「ドンマイ」などの歓声が上がった。同窓会事務局員の渡辺浩明さん(29)は「活躍に元気をもらった。同窓生として誇らしい」と語った。
同日未明に行われた女子シングルスの大堀彩の8強入りをかけた決勝トーナメント1回戦でも観戦会が開かれ、会場が声援にあふれた。