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【8月10日付編集日記】損得抜きで

08/10 08:01

 人はなぜ、赤の他人を一生懸命応援できるのだろうか―。リオ五輪閉幕後、小川洋子さんが、こんな疑問から始まる随想を書いている。損得抜きで誰かのために祈ったり喜びを自分のものとして共有したりする。そうして他者とつながり合える人とは何なのだろうと

 ▼小川さんはこんな答えを示す。「人間が地球上の過酷な生存競争を生き延びるため、進化の過程で手に入れた心の働きなのだろう」。大事なのは損得抜きという点。みんなわが子の精神が平和を生み、人間を生き延びさせたと指摘する

 ▼「平和の祭典」が間もなく閉幕する。バドミントンでは、2大会連続で銅メダルを手にした渡辺勇大・東野有紗選手組の試合にハラハラ。柔道では、指導が出はしないか気になって仕方がなかった

 ▼損得抜きで応援しているつもりだったが、スケートボードの四十住(よそずみ)さくら選手の発言にはっとした。予選の試技を終え他選手の結果を待っていた際の取材に、「人の失敗は祈りたくない」と答えていた。競技者としては当然の思いなのだろう

 ▼ここで相手がミスしてくれたらメダルに手が届くのにと、手を合わせていた自身を省みる。よこしまな気持ちは封印し、残る競技を楽しむことにしよう。

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