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岸田首相、突然の退陣表明 福島県民「潮時だった」 驚きと冷静な声

08/15 07:25

岸田首相の自民党総裁選不出馬を伝えるニュースに見入る来店客=14日午後0時25分ごろ、福島市・ケーズデンキ福島南本店

 「身を引くことでけじめをつけたい」。岸田文雄首相が14日、自民党総裁選への不出馬を表明し、9月末にも退陣する見通しとなった。相次ぐ「政治とカネ」の問題や物価高の長期化で政権の支持率が低迷していただけに、福島県民からは「急な表明でもう少し説明してほしかった」「潮時だったのでは」と驚きと冷静に受け止める声が入り交じった。

 「世間の風当たりが強い中、個人的には岸田首相はよく対応していたように感じる」。福島大人間発達文化学類2年の田上育樹(やすき)さん(19)=福島市=は、首相が退陣理由に挙げた「政治とカネ」の問題を巡る取り組みについて印象を口にした。ただ「再発防止へ具体的に何をしているのかがよく分からなかった」と振り返り「次の首相には少しずつでも市民の生活を良くしてくれる政治を期待している」と求めた。

 郡山市の会社員柳沼悠華さん(24)は「突然のことで驚いたが(次の首相は)お金の問題をきれいにして、被災地支援などに力を入れてほしい」と期待した。

 岸田首相は看板政策の一つに「次元の異なる少子化対策」を掲げた。会津若松市の団体職員岩田久美さん(47)は周囲の若い人から「(給与面で)お金がないから結婚できない」「結婚に意義を見いだせない」との声を聞くといい「こういったことが解消されれば良かったが、もう少し対策を取ってほしかった」と指摘した。

 長引く物価高に伴う経済政策を巡っては、須賀川市の主婦阿部栄子さん(68)は今も日用品の値上がりを実感しており「政策の効果が日常生活であまり感じられなかった」と語った。

 国際情勢が混迷する中で岸田首相は外相経験を生かし、首脳外交や安全保障の強化に力を入れた。白河市の飲食店経営瀬谷安男さん(70)は、首相が議長を務めた広島での先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に触れ「各国首脳と共に原爆死没者慰霊碑に献花したことを評価する」と成果を挙げた。安保政策については「賛否両論はあるが、厳しい世界情勢の中で防衛費増額という難しい判断を下したと思う」と評価した。

 風評対策「もっとすべきだった」

 本県の復興に向け懸案だった東京電力福島第1原発で発生する処理水を巡っては、岸田政権が昨年8月24日、海洋放出を始めた。

 目立った風評被害は生じていないものの、反発した中国が日本産水産物の全面禁輸に踏み切ったことを念頭に、いわき市の自営業長谷川技(たくみ)さん(34)は「特に海外の反応を見ると、もっと風評対策をするべきだったと思う。今後も自慢の海を守るためにしっかりとした対策を続けてほしい」と注文を付けた。

 原発事故で帰還困難区域となった地域の避難指示解除に向け、双葉郡では除染などを進める「特定帰還居住区域」が設定された。富岡町の小良ケ浜地区の行政区長を務める関根弘明さん(68)は首相の決断に理解を示した上で「政権や党のために国民がいるのではない。国会議員は本分である国民のために働いてほしい」と求め、古里の復興に向け「住民に向き合って、きっちり責任を果たしてほしい」と訴えた。

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