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再エネと環境、両立に課題 福島・先達山メガソーラー

08/19 07:30

景観の問題や泥水の流出などが発生した先達山のメガソーラー造成地=14日、福島市
泥水が流出した現場を確認する遠藤さん。「造成工事の影響は出ている」と懸念する=7月22日、福島市

 福島市西部の先達山で進む大規模太陽光発電施設(メガソーラー)造成事業で、山肌露出による景観悪化や県道への泥水流出などの問題が相次いでいる。事業者は県や市の指導に基づき事業計画を前倒しして対策を進めるが、市民から説明を求める声が相次ぐなど懸念は拭い切れていないのが現状だ。メガソーラーを巡っては全国で事業者と自治体や住民とのトラブルが顕在化しており、太陽光発電施設の導入が急速に進む県内でも再生可能エネルギーの推進と環境保全の両立をどう図るのかが、難しい課題となってきている。(報道部・緑川沙智)

 景観要件含まず

 先達山のメガソーラー事業を巡っては、造成工事当初から景観への影響が問題視されてきた。昨年春、森林伐採で吾妻山麓にむき出しの山肌が現れると、市には景観悪化を懸念する多くの苦情が寄せられ、市が山地へのメガソーラーを「これ以上望まない」とする宣言を発する事態に発展。6月には造成地の仮設水路から大量の泥水が県道に流れ出すなどの問題も起き、工事の安全性や災害時のリスクに疑問の声が上がる。

 メガソーラー建設のための林地開発は環境影響評価のほか、県の審議会を経て県の許可を受けることで可能になる。ただ審議会は災害の防止などの要件を満たす場合には開発を認めざるを得ず、要件の中には今回問題となった景観への影響は含まれていない。また泥水流出を受けて県は、事業者に工事の安全確保などの行政指導を行ったが「防災設備は計画通りに整備しており、不適切な条件違反はなく中止指示は出せなかった」(森林保全課)として、対応が後手にならざるを得なかった理由を説明する。

 全国でトラブル

 メガソーラー建設を巡っては、全国各地で同様のトラブルが相次いでいる。景観への影響を理由とした開発許可を巡っては事業者が自治体を訴えるケースもあり、林野庁によると、林地開発許可を受けたメガソーラー工事の約1割で土砂流出などの問題が確認されているという。東京電力福島第1原発事故を受け、再エネの導入推進にかじを切った県内では現在も各地で太陽光発電施設などの導入が進むが、今年だけでも福島市のほか、郡山市逢瀬町夏出のメガソーラー用地造成工事で不正な盛り土が行われたケースも確認された。

 計画情報の発信

 国は相次ぐトラブルを受けて、メガソーラー建設に伴う林地開発許可手続きの対象を拡大するなど基準を厳格化した。砂防や流域水文学が専門の名古屋大の五味高志教授(54)は、理解不足に伴うトラブルを起こさないためにも「県や市町村が連携し、建設計画が入る段階で情報を発信する仕組み作りが必要」と指摘する。その上で再エネ導入拡大と環境保全の両立に向け「資源をどう活用したり、維持管理に反映させたりするかを考えることが重要」としている。

 メガソーラーを巡っては独自の条例などで規制をかける自治体も増えてきており、県内では大玉村が2019年にメガソーラーなどの設置時に住民への説明や村の同意が必要となる条例を制定。隣県の宮城県では、森林を大規模開発する再生可能エネルギー事業者に対して営業利益の2割相当を課税することで、森林以外に誘導する全国初の新税を4月に導入している。

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