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再エネと環境、両立に課題 福島・先達山メガソーラー

08/19 07:30

景観の問題や泥水の流出などが発生した先達山のメガソーラー造成地=14日、福島市
泥水が流出した現場を確認する遠藤さん。「造成工事の影響は出ている」と懸念する=7月22日、福島市

 雨の度「泥水不安」

 福島市西部の先達山で来年の完成を目指して開発が進む大規模太陽光発電施設(メガソーラー)を巡っては、観光地の高湯温泉街に続く県道に泥水が流出したことを受け、地元に不安が広がった。「本当に大丈夫なのだろうか」。市民の間には工事の安全性や景観について事業者に説明を求める声が絶えず、事業の行方に厳しい目を注いでいる。(高橋夏実)

 台風7号の接近に伴い、大雨による災害が懸念された17日。「今回は泥水があふれたという情報は入っていない。しかし、雨が降るといつも不安になる」。福島市の高湯温泉観光協会長の遠藤淳一さん(69)は心境を明かした。

 遠藤さんが思い浮かべたのは、市内に大雨が降った6月2日の光景だ。メガソーラーの造成地から県道に大量の泥水が流出し「あそこまで真っ茶色の水が流れてくることはなかった」。造成地北側の金堀沢の下流では、農業用水に濁り水が混入した。

 造成地には雨水が一気に流れないよう一時的に水をためる「調節池」があるが、そこに水を流す仮設水路に土砂がたまり、下流へあふれたのが原因だった。

 遠藤さんによると、泥水が流れ出た場所にある沢は普段は水がなく、地元では「枯れ沢」と呼ばれていた。これまで大雨で沢に水が流れることはあったものの、茶色い泥水ではなかったという。遠藤さんは「造成工事の影響は間違いなく出ている」と指摘する。

 事業者は県の指導などを受けて対策工事に取り組んだが、高湯地区に住む高原幸一さん(59)は露出した山肌を見て「土砂災害が起こって道がふさがったら、逃げ道がない」と不安を口にする。同市在庭坂で介護事業所や学童保育を運営するNPO法人まごころサービス福島センターの担当者は「事業者の説明会に参加したが『景観は損なわれない』と言われた。子どももいるので(災害に)恐怖を感じている」と心配そうに話した。

 遠藤さんは高湯温泉で宿を営む事業者として、県が推し進める再生可能エネルギーの導入拡大には協力する考えだ。だからこそ事業者が地元に約束した安全な工事を「しっかり実行してもらいたい」と求めている。

 事業者は市に提出した工程の資料で「可能な限り緑化工程を前倒しするなど、設備の整った箇所から種子散布、植樹、植生シート敷設を行う」とした上で「一日でも早く市内からの景観を改善する努力をする」との見解を示している。

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