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映画ヒット「聖地巡礼」続々 ロケ地の奥会津、台湾から注目

08/20 09:30

JR只見線を望む第1只見川橋梁(きょうりょう)ビューポイントで写真撮影する台湾人観光客ら=三島町

 台湾人旅行者が奥会津地域に熱い視線を注いでいる。福島空港と台湾を結ぶ定期チャーター便の運航再開と新型コロナウイルスによる行動制限緩和に加え、福島県只見町を舞台にした映画「青春18×2 君へと続く道」が台湾で大ヒットし、多くの旅行者が「聖地巡礼」に訪れているようだ。県や地元は現状を好機と捉え、冬景色などにとどまらない本県の魅力を伝えようと新たな仕掛けに乗り出した。

 道の駅尾瀬街道みしま宿(三島町)前で7月下旬、停車した大型バスから台湾人観光客が次々と出てきた。向かった先はJR只見線を眼下に望む高台。一行は絶景に目を輝かせ、笑顔で撮影を楽しんでいた。

 「台湾人旅行客に加え、国内の若者らの来訪も増えている」。町観光協会の担当者は、映画の誘客効果に確かな手応えを語る。

 映画は、台湾に住むジミーと日本人女性のアミの淡い恋模様を描いた。出会いから18年後、36歳になったジミーはアミが生まれ育った只見町を訪ねようと決心し、普通列車に揺られながら一期一会の出会いを繰り返す。「初恋の記憶」を巡り、過去と現在の思いが交錯する内容だ。台湾で3月、日本では5月に公開された。

 福島―台湾便の再開と新型コロナ禍からの観光回復、映画の聖地巡礼効果が相まって、奥会津を周遊するインバウンド(訪日客)は増加。会津鉄道を昨年度に利用した団体旅行者は前年度比4.4倍の3万1117人で、インバウンドが65.1%を占めた。ほぼ台湾人と見込まれ、只見線も同様に伸びているとみられる。

 県は今年2月に只見線PR動画の「台湾編」を公開し、再生回数は25万回を超えた。県担当者は「行政が作る動画としては異例のヒットだ」と驚きを隠さない。

 さらに弾みを付けようと、県は本年度、インバウンド向けのチラシを初めて作製するほか、来年1月を念頭に台湾でPR活動を展開する計画を練る。只見町も、只見駅やアミが暮らした一軒家など映画のロケ地をまとめた冊子を作り、歓迎ムードの醸成に力を入れる。

 一方、奥会津には大規模な宿泊施設が少なく、少人数旅行が中心という側面もある。町交流推進課は「台湾人旅行者は気に入った場所を何度も訪れ、リピート率が高い。少人数の受け入れを積み重ねられるよう知恵を絞りたい」としている。

 県生活交通課の担当者は「福島への台湾インバウンドはまだまだ伸びしろがある。この機を逃さず、来訪者を増やしていけるよう仕掛けていく」と話す。

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