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【環境考察/農業新時代】耐性米、国内作付け拡大 猛暑でも高い水準

08/29 07:45

高温耐性品種のコメ「つや姫」と「雪若丸」。作付面積が拡大している=山形市

 県内で暑さに強いコメの品種開発が進む中、国内では各地でつくられた高温耐性品種が一定の成果を上げている。昨年の記録的な猛暑でも品質低下の割合が低く、作付けを拡大する動きも出ている。コメの高温対策は加速している。

 ■1等比率60ポイント減

 「これまで蓄積したデータや経験が参考にならないくらい暑かった。どの程度品質や収量が下がるのか未知数だった」。山形県農業技術環境課長補佐の矢野真二(52)は昨年を振り返った。不安は数値として表れた。昨年産の1等米比率(昨年12月現在)は主力の「はえぬき」が35.1%で、前年より60ポイント低下した。

 一方で高温耐性品種の「つや姫」は51.7%、「雪若丸」は84.8%だった。つや姫と雪若丸の比率に違いは出たが「収量は思ったより下がらなかった」という。高温耐性や品質面などから、つや姫の作付けは島根県や大分県など西日本で広がっている。

 県は昨年の1等米生産者から聞き取りし、対策のポイントを記した「高温少雨対策マニュアル」を作成した。「基本技術がしっかりしている人が1等米を作れている。基本技術の徹底を前面に押し出していきたい」と矢野。「昨年と同じような気象条件でも例年並みの1等米比率を確保できるようにしたい」と意気込む。

 「米どころ」といわれる新潟県でも、高温耐性の品種は猛暑の影響をあまり受けなかった。主力の「コシヒカリ」に生産が集中することを避けるため、将来的な地球温暖化を見据えて開発された「新之助」の1等米比率は94.7%。例年とほぼ変わらない結果に「真価が発揮された」と新潟県農業総務課政策室長の皆川律子(52)は胸を張る。約4500ヘクタールだった作付面積はことし、約5300ヘクタールに拡大する計画だ。

 一方でコシヒカリは苦戦を強いられた。1等米比率は6%を下回り史上ワースト。「深刻な問題だった」と新潟県農産園芸課参事の滝沢明洋(53)はショックを隠せない。

 ■素早く対策提案

 危機感は素早い行動につながる。昨年10月に大学教授やJA関係者、研究機関などによる研究会を設置。1等米比率の低下要因を分析し、短期、中長期的な対策をまとめ、同12月に提言書を県に提出した。ポイントが端的にまとめられており、ことし3月に公表している。「(農家の)ことしの田植えに間に合うよう、スピード感を持って対応した」と滝沢は話す。

 昨年度から暑さに強いコシヒカリの開発も始まった。「異常高温が常態化する懸念がある中、できるだけ早い対応が求められている」と皆川は強調する。(文中敬称略)

 高温耐性品種のコメ 農林水産省によると、2023年は本県などを除く39府県で作付けの報告があった。主食用米作付面積に占める高温耐性の割合は14.7%。19年から4.8ポイント増えた。主な品種の1等米比率は「サキホコレ」(秋田県)が93.4%、「とちぎの星」(栃木県)と「富富富」(富山県)が93.1%など。

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