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識者「阿武急は広域インフラ」必要性訴え 宮城で沿線住民ら集会

09/01 07:40

「赤字か黒字かよりも、インフラをどう維持するかに主眼を置くべきだ」と訴える高嶋教授=31日、宮城県柴田町

 第三セクター阿武隈急行の将来について沿線住民が語り合う集会「阿武隈急行を考える集い」が31日、宮城県柴田町で初めて開かれた。地方鉄道を研究する青山学院大の高嶋修一教授(日本経済史)は、同県が検討しているバス転換について「客観的に見て難しい」と指摘し、地域インフラとして維持する必要性を強調した。

 沿線住民や福島学院大の学生ら有志でつくる実行委員会の主催。宮城県が同県側区間をバスなどに転換する検討を進める中、鉄道の存在意義を確認する趣旨で開催した。

 高嶋氏はバス転換を巡り、比較的利用が少ない同県側区間であっても「平日朝はほぼ満員の路線バス7~8台が必要となり、時間も余計にかかる。運転手確保も非常に厳しく、バス転換は容易ではない」と述べた。

 阿武隈急行の利用目的は7割強が通勤・通学で、沿線居住者が大多数だと分析。沿線自治体が多額の費用を道路整備に投じていることを引き合いに「阿武隈急行は広域的インフラとして機能しており、行政の積極的関与が望ましい。住民のマイレール意識に頼るのは違う」と強調した。利用促進策として、高速化や周遊観光ルートの設定を挙げた。

 阿武隈急行は、新型コロナウイルス禍や相次ぐ自然災害によって業績が急激に悪化。本県側は、利便性向上により経営改善が図れるとして、鉄道維持を求めている。

 自治体に鉄路維持要請へ

 集会には沿線住民ら約150人が参加し、意見交換の場が設けられた。実行委は意見を踏まえ、近く沿線自治体と阿武隈急行に鉄路維持などを要請する方針を示した。

 参加者からは「快速列車を導入すれば利便性が高まる」「地域インフラを維持するため、私たちも行動しないといけない」などの意見が上がった。

 実行委の中沢光代表は取材に「大勢の来場があり、阿武隈急行の必要性を再認識した。利用を増やせるよう活動を続けたい」と語った。

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