台風のさなか、裏の医院に飼われていた猿が逃げた。嵐の音に野生が呼び戻されたのか、屋根の上で叫び声を上げる。台風が去った後、猿は小さな亡きがらとなっていた ▼エッセーの名手、向田邦子が子どもの頃の台風の思い出をつづっている。猿の不思議な所業とは裏腹に、用心深くあれこれ備える向田家の人間模様がほほ笑ましい。兄弟げんか、夫婦げんかも休戦となり「父も母も、みな生き生きしていた」(「霊長類ヒト科動物図...
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