子どもに範を示す立場である教職員のパワハラやセクハラがなくならない。ハラスメントが許されないのは当然ながら、問題を見て見ぬふりをしている教職員も自らの人権感覚を疑う必要がある。
県立、市町村立学校の全教職員らを対象にした県教委の調査で、回答者約1万4千人のうち、5%弱の661人がこの1年間に、威圧的な行為やたたかれたなどのパワハラを受けたと答えた。性的な話をされた、必要以上に体を触られたなどのセクハラを受けた人は1%強の185人いた。
回答者数の増加もあって、昨年度に比べパワハラは19人、セクハラは5人それぞれ増えた。問題が解決されないまま継続していたり、新たにハラスメントが起きていたりする可能性がある。 多くの人がハラスメントを受けても「何もしなかった」と答えており、声を上げても解決しないという諦めが教職員に広がっている恐れがある。各教委や学校は、調査結果を問題解決に結び付けられるかどうかが問われている。
調査は匿名式と、聞き取り調査などを希望する記名式の2段階となっている。今回の調査結果は匿名式の第1段階に当たる。
記名式では被害の訴えを聞き取るだけでなく、ハラスメントに当たるかどうか判断するために加害者とされる側への調査も必要となる。ただ実名を伏せても個人を特定される不安があり、調査をためらう被害者は少なくないだろう。
人間関係の悪化を懸念して調査が進まず、問題が未解決となるのは避けなければならない。県教委には、アンケートなどを通じて第三者が見聞きした情報を積極的に集め、加害性が強い場合には厳正に対処することが求められる。
閉鎖的な職場環境は同調圧力が働きやすく、学校も例外ではないとの指摘がある。周囲の教職員から「空気が読めない人」などと思われるのを避けるために、加害者の言動を黙認しやすくなる。
県教委は、不祥事防止のためのチェックシートを改訂し、「同僚等に対して、ハラスメントと思われる言動を見かけたときには、そのまま放置せず、本人に改善を促すなど適切に対応している」との項目を盛り込んだ。問題を見過ごさないよう行動を促す狙いだが、自信を持ってチェックできる教職員はどれほどいるだろうか。
教職員は、子どもたちにいじめの傍観者とならぬよう教えているはずだ。ハラスメントの根絶と並行し、問題のある言動を把握した際には同僚として指摘し、改善できる職場をつくることが重要だ。