県内で初めて線状降水帯が発生し、浜通りに甚大な被害をもたらした記録的豪雨から1年となる。昨年のこの時期と同様、各地で記録的な雨が観測されている。この豪雨を教訓に同規模の雨に対して被害を防ぐことができるようになっているかが、行政だけではなく住民にも問われる節目だ。
台風13号から変わった熱帯低気圧の影響で昨年9月8日から9日にかけ、いわき、南相馬両市などで猛烈な雨が降り、河川が氾濫するなどした。県のまとめによると、1人が死亡、5人がけがをしたほか、住宅約900棟が全半壊するなどした。
いわき市によると、誰が作ったか分からない「勝手橋」にがれきが引っかかって川の水があふれたり、排水施設の能力を超える大雨で下水道などから雨水があふれたりしたことで被害が大きくなったことが分かっている。勝手橋は、行政が把握していないことが多い。大雨の際に下水道のどこから水があふれやすいかを全域で予測するのも難しいのが現状だ。
勝手橋の撤去や河川に土砂などを流入させないための対策、下水道関連施設の強化は一朝一夕にできるものではない。年に何度も猛烈な雨が予測される状況では、行政の対応に頼るだけではなく、住民が自ら身を守る方法を決めておくことが重要となる。
猛烈な雨が長時間降った時に、自宅の周りで土砂災害が懸念される場所がないか調べ、避難所への移動が難しい時にどう対応するかなどを前もって決めておくべきだ。高齢者などのいる世帯では、事前避難などの指示が出た時にどう対応するかも検討しておくことが求められる。
有識者チームがまとめた、いわき市の災害検証の最終報告は、ウェブページに掲載する災害情報が見にくいことを課題の一つに挙げ、地区や河川ごとの情報発信などが必要と指摘している。
被災地区のアンケート調査では、体が不自由など、配慮を必要とする人がいて、避難しなかった世帯の多くが「避難所の環境が不安だった」ことを理由に挙げている。検証チームは、避難者の多寡にかかわらずパーティションを設置することや、空き教室の積極的な利用でプライベートの確保に努める必要があるとしている。
線状降水帯などの被害は県内全域で起きる恐れがある。災害時には、必要な情報が届いているかどうかや、避難生活への不安は行動を大きく左右する。県や市町村はこの検証を参考にするなどして、改善を進めてもらいたい。