【9月8日付社説】立民代表選告示/論戦通じ政権担当能力示せ

09/08 08:10

 立憲民主党代表選がきのう告示され、野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、泉健太代表、吉田晴美衆院議員の4氏が立候補した。共同記者会見で各候補が意欲を示したのは次期衆院選での政権交代だ。

 派閥による裏金事件で自民党に逆風が吹いている。共同通信社が7月に行った世論調査では、衆院選の望ましい結果として「与党と野党の勢力が伯仲する」との回答が5割に上った。立民の政党支持率は1割台と低迷が続いているが、ある候補は「めったにない政権交代のチャンス」と捉える。

 野党第1党の代表選は、政権交代が起きた際の首相候補を決める選挙とも言える。国のリーダー候補にふさわしい人物かどうか、投票権のある議員や党員だけでなく国民も見極めることが重要だ。

 政権与党の監視は野党の重要な役割で、提案した政策より、与党の政策などへの批判的な姿勢が目立つのはやむを得ない面がある。ただ政権を担うのなら、裏金事件を受けた政治改革だけでなく、外交・安全保障など重要課題への対応の方向性を定め、国民の審判を仰がねばならない。

 立民が政権交代の選択肢となり得るのか、地力を示す機会となる。各候補には、実現したい社会像や重要政策などについて論戦を尽くすことが求められる。

 旧民主党系の政党は自民と差別化を図ろうと、現在の立民に至るまで離合集散を繰り返してきた。しかし展望が開けず混迷を深め、自ら「1強多弱」と評される政治状況をつくってきた面がある。

 今回の代表選は新味に欠けると指摘されているが、刷新感のみでは有権者の支持は得られない。立民は、目先の評価に固執せず、党勢拡大に取り組むことができる代表を選べるかが問われる。

 衆院選を見据え、他の野党との選挙協力の在り方も重要な争点となっている。政権交代の実現可能性を高めるならば、単独過半数の確保を目指しながら、連立政権の構想を議論する必要がある。

 しかし記者会見で連携の可能性のある党として名前が挙がったのは、立民と同じく旧民主党の流れをくむ国民民主党にとどまった。各候補は立ち位置の違いをにじませつつも、戦略の念頭にあるであろう日本維新の会や共産党の名を積極的に出すことはなかった。

 衆院選後の結果を受け、その場しのぎでつくるような連立政権では支持は得られまい。各候補は、連携が想定される政党名と一致点を見いだすことのできる基本政策などを示し、目指す政権像への理解を得る努力をすべきだ。

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