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【9月8日付編集日記】北斗七星を仰ぐ民

09/08 08:15

 山や川、つまり国は異なるけれど、風や月、天を同じくしているのだから―。奈良時代の皇族、長屋王が唐に贈った千枚の袈裟(けさ)に刺しゅうされていた漢詩の訳だ。こう続く。仏の弟子にこれを贈る、共に縁を結ぼう―

 ▼仏教の戒律を日本に伝えた唐の高僧、鑑真。渡海の決意をした理由の一つに袈裟の寄進を挙げたとされている。詩に心を動かされたのかもしれない(中西進「聖武天皇」PHP新書)

 ▼戊辰戦争で敗北した会津藩は再興を懸け、青森県の下北半島などに斗南藩をつくった。その名は漢詩句「北斗以南皆帝州」に由来するとの説がある。北の辺境であっても帝の治める国に変わりなく、われわれは共に北斗七星を仰ぐ民である―との意味だという

 ▼寒さに耐え、やせた土地を耕し、藩校日新館を再開させて師弟の教育に力を注ぐなど、逆境に屈せず後の発展の礎をつくった。地元の人たちは、辛抱強い会津人の姿を「会津さま」と尊敬を込めて呼んだ

 ▼斗南藩のゆかりで、会津若松市と青森県むつ市が姉妹都市を締結してから23日で40周年を迎える。記念イベントでは、青森の若者たちが会津を訪れる。何の隔たりもない同じ空の下、先人が結び付けた縁をさらに固くしたい。

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