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【9月11日付社説】デブリ採取の再開/東電の当事者能力問われる

09/11 08:00

 協力企業に任せきりにしてトラブルとなるのは、廃炉の責任を全うしていることにならない。責任という言葉があまりに軽い。

 東京電力が、作業を中断していた福島第1原発2号機からの溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出しを再開した。今回の作業は、原子炉から少量のデブリを取り出して、本格的取り出しや処分に向けた検討につなげるのが狙いだ。取り出しを成功させ、廃炉作業の進展につなげてほしい。

 8月に作業が中断した原因は、取り出し装置のパイプ接続順の誤りという、極めて単純なミスだった。東電によると、接続作業は7月に行われたものの、放射線量が高い状況下で作業員が被ばく線量を気にするなどして焦りが生じ、運び入れたパイプの数などを誤って報告したことなどが、接続順のミスにつながった。

 東電は高線量下での作業であるにもかかわらず、パイプ接続を一般的な作業と位置付け、社員が立ち会わず、報告を受けたのみだった。デブリの取り出し開始という注目を集めるタイミングで、協力企業任せの実態が浮き彫りとなった。東電の廃炉に関する姿勢と当事者能力を疑わせるもので、お粗末としか言いようがない。

 デブリの状態は未知数の部分が多く、今後もさまざまなトラブルが起きることも予想される。

 課題となるのは、東電がトラブルのたびに、説明を含めた対応のまずさにより、国民の不信を招くのを繰り返していることだろう。トラブルの責任は東電にあるとして反省を示しながらも、実質的には協力企業に原因があると説明するケースが多い。そうした姿勢が現場の監視の緩みにつながっていると考えるべきだ。

 東電は再発防止に向けて「(今後は)工程全般で東電による確認を行う」としているが、全ての作業に社員を立ち会わせるということではあるまい。今回のトラブルは東電が立ち会いを必要としないと判断した作業で起きたものであることを踏まえれば、実効性に疑問が残る。今回の失敗を教訓に、作業の確認方法を抜本的に見直す必要がある。

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、第1原発でトラブルが相次いでいる背景には多層化した請負工事体制があると指摘し、現場の安全や作業の質の確保が東電の責務としている。重要な作業を任せる以上、協力企業にはそれを担う、高い技術を持った人材が不可欠だ。東電には協力企業との連携の在り方の見直し、作業員の技術の底上げが求められる。

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