消費者と生産者の双方が受け入れられる価格を安定的に維持できる体制づくりが重要だ。
昨夏の猛暑による高温障害でコメの流通量が減少したことなどを受け、先月から全国の小売店などで品薄や価格高騰が顕著になっている。新米が出回り始め、品薄感は解消されつつあるものの、2024年産米の価格も大幅に値上がりする公算が大きくなっている。
JA全農県本部は、県内各JAが生産者に前払いする金額の基準となる主要銘柄の概算金(1等米60キロ)について、最も高い会津産コシヒカリで1万6800円、最も低い全県産の里山のつぶで1万5100円に決めた。23年産比で4千~4300円の増額で、増額幅は過去最大だ。
米価は消費者のコメ離れなどによる需要減で、低水準が続いてきた。一方、燃料費や資材価格の高騰で生産コストは高止まりの状況にあり農家経営を逼迫(ひっぱく)している。
概算金の増額により農家は生産コストの上昇分を価格に転嫁できた形だ。各農家は引き続き生産意欲を高め、品質や収益性の高いコメづくりに励んでもらいたい。
概算金は流通価格や店頭価格に直結するため、家計の負担増が懸念される。過度な価格変動で消費者のコメ離れに拍車がかからないよう、国や自治体は市場の動向を注視し、低所得者や学校給食などの支援策を検討してほしい。
コメの需要は年10万トンのペースで減少が続く。このため国は飼料用米や麦、大豆などへの転作を促すなど生産量を調整し、需要と供給のバランスを図ってきた。しかし生産調整で離農者や耕作放棄地が増え、コメの生産基盤の弱体化を招いたのは否めない。
農家の高齢化や後継者不足は加速している。コメの卸業団体は40年のコメ需要が20年比で41%落ち込むのに対し、生産者は65%減とさらに大幅に減少すると試算し、国内産だけで需要を賄えない可能性を指摘している。
23年産米のように、異常気象や自然災害などの影響で収穫量が大幅に減少する恐れはある。国内だけでなく、世界各地で異常気象による農作物の被害が顕在化している。国は突発的な事象なども想定し、変動する需要に対応できる生産体制を構築することが大切だ。
今夏のコメ不足では政府備蓄米の放出を求める意見があったものの、農林水産省は「年間を通じて供給が不足する場合の対応だ」と見送った。一時的であっても大幅に価格が上昇した場合は低所得者などの影響も考慮し、柔軟に対応することを検討してほしい。