【9月27日付社説】新幹線の連結外れ/安全最優先で信頼取り戻せ

09/27 08:05

 人命が最優先であることは言うまでもない。二重三重の安全確保への取り組みを求めたい。

 東北新幹線の東京行きのはやぶさ・こまち6号が宮城県内を時速315キロで走行中、車両の連結が外れる事故が起きた。非常ブレーキが作動したものの、前方のはやぶさと後方のこまちは停車まで5キロ近く分離した状態で走行した。 連結部分は回転錠でしっかり固定され、時速5キロ以下でないと外れない仕組みで、走行中に外れたのは今回が初めてだ。停車時に車両の間隔は約300メートルあったが、追突や脱線などの重大事故につながりかねなかった。極めて危うい状況を招いたことを、JR東日本は深刻に受け止めるべきだ。

 JR東はきのう、連結器を強制的に分離する装置周辺に金属片が見つかったと発表した。この金属片で電気的な誤作動が生じ、連結が分離した可能性が高いという。金属片は車両の製造時に発生した物の一部とみられる。

 JR東が連結運行している東北、山形、秋田新幹線の96編成全てで同様に金属片が付着していないか調査したところ、10編成で確認された。事故直後、各新幹線は通常運行に戻ったが、この金属片が原因であれば、同様の事象が起きる可能性があったということだ。

 新幹線が長期にわたり運休となれば、社会経済活動に大きな影響を及ぼす。しかし事故原因が十分に究明できていない段階で、そのまま連結運行を続けたことには疑問が残る。単独編成での運行にとどめることも可能だったはずだ。

 JR東と、監督する国土交通省は、事故直後の対応が適切だったかを検証する必要がある。

 今回、大惨事を回避できたのは非常ブレーキなどの安全装置が通常通りに機能したことが大きい。JR東は安全確保のための機器やシステムの動作確認、点検に万全を期さなければならない。

 東北新幹線は最近、トラブルが相次いでいる。3月には郡山駅で車両が所定位置を500メートル超えて停止したほか、4月には福島―白石蔵王間で安全確認をしていた工事車両から油漏れが見つかり、最大5時間半の遅れが出た。

 新幹線は世界に誇る高度な技術やシステムで運行されており、移動手段としての利便性や安全への評価は高い。しかし、最近の事故やトラブルがその評価、利用者の信頼を大きく損ねている。

 想定外の事態は起こり、絶対に安全というものはないことを、JR東、国は肝に銘じてさまざまな対策に取り組まなければ、利用者の信頼は取り戻せない。

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