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【10月2日付社説】石破内閣発足/国民に何を問うか見えない

10/02 08:10

 自民党の石破茂総裁が首相に選ばれ、新内閣が発足した。首相は「国民に正面から向き合い、国民の納得と共感を得られる内閣にする」と語った。有言実行を貫いてもらいたい。

 石破氏は党人事で、確執があるとされる麻生太郎副総裁を最高顧問に据え、副総裁に後ろ盾として菅義偉元首相を配した。閣僚人事では総裁選で争った林芳正氏を官房長官、加藤勝信氏を財務相に起用し、挙党態勢の構築を強く意識したことがうかがえる。

 ただ、総裁選の決戦投票で戦った高市早苗氏は党総務会長起用の打診を固辞するなど、党内融和に不安材料を残した。閣僚人事でも側近や無派閥系の議員が重用された。「無派閥」を掲げ、党内基盤が弱い首相が、どのような政権運営を見せるかは不透明だ。

 極めて異例なのは首相就任前に総選挙の日程を宣言したことだ。石破氏はおとといの会見で、9日に衆院を解散し、27日投開票で衆院選を行うと表明した。臨時国会では衆参両院の代表質問、党首討論は行うものの、野党が求める予算委員会の開催は見送るという。

 石破氏は総裁選で「国会での与野党間の議論」を経て、解散総選挙に臨む意向を示していた。もし新政権誕生の浮揚効果が見込める短期決戦で衆院選に臨もうというのなら、約束をほごにする形である。早期解散の正当な理由とともに、選挙で国民に何を問うのか、それを明確に示すべきだ。

 国会では政治不信の根源となっている「政治とカネ」の問題を巡る裏金事件の真相解明や再発防止策をはじめ、首相が持論としてきた防災省や、アジア版北大西洋条約機構(NATO)の創設についても踏み込んだ議論は行われない見通しだ。国民生活を左右する経済政策も具体策は見えない。

 どのような国を目指し、そのためにどういう道筋を描いているのかを国民に説明し、国会で議論するのが、時の政権、政党の果たすべき役割だ。党利党略を優先し、国会での論戦を避けるような姿勢は看過できない。

 本県の復興に関連する閣僚ポストでは、復興相に伊藤忠彦元環境副大臣、経済産業相に武藤容治元経産副大臣、環境相に浅尾慶一郎参院議院運営委員長が就いた。

 政権発足から間もなく選挙戦に突入し、それぞれの大臣が復興の実態を把握、理解するための十分な時間が得られないような状況があってはならない。各大臣は現場主義を徹底し、被災住民らの声を踏まえてさまざまな施策を着実に前に進めてもらいたい。

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