戦火が大きく広がってしまった。国際社会は強い姿勢でイスラエル、イラン双方に自制を求めていかなければならない。
イスラエルは親イラン民兵組織ヒズボラが前線基地としているレバノン南部に地上侵攻した。一方、イランはイスラエルに対し、弾道ミサイル180発超を発射する大規模な攻撃を行った。ヒズボラの指導者ナスララ師らが殺害されたことへの報復としている。
イスラエルは9月に入って、戦線拡大の動きを強めた。レバノンのほか、親イラン武装組織フーシ派が支配するイエメン西部のホデイダにも空爆を行っている。
イランはこれまで、親イラン組織を後方支援することでイスラエルに対抗してきたが、イラン自体の攻撃には慎重だった。しかし、相次ぐ攻撃を受け、報復に踏み切らざるを得なくなった形だ。
イスラエルによるレバノンなどへの攻撃では多くの死傷者が出ている。イランのミサイルの多くは迎撃されたとみられるもののけが人が出ているとの情報がある。これ以上の戦闘継続は許されない。
イスラエルのネタニヤフ首相はイランへの報復を示唆している。一方のイランはイスラエルが反撃しなければ「われわれは行動を終了する」としているものの、ペゼシュキアン大統領はX(旧ツイッター)への投稿で、再攻撃も辞さない姿勢を強調している。
イランが直接攻撃に踏み切ってしまった以上、両国や親イラン組織など、当事者同士による事態収束はいっそう難しくなったと言わざるを得ない。今後を左右するのは、ガザ侵攻当初からイスラエルを支援する姿勢を崩していない米国の動向だ。イランは攻撃後、米国に対し「戦争の準備はできている」と伝えたという。真意は、米国が収束に向けて動くよう促すことにあるとみるべきだろう。
米国防総省は、レバノンへの地上侵攻についてイスラエルから事前に説明があったことを明らかにしている。実質的に攻撃を容認していた形だ。イランの攻撃に対しても、米国は迎撃に参加するなどしており、戦闘を抑止する役割を果たしていない。
バイデン米政権が指導力を発揮できていない背景には、来月に迫った大統領選で親イスラエルの有権者の動向が結果を大きく左右する事情がある。イスラエルがそうした米国の状況を見越して、戦線を拡大しているのは疑いない。
日本を含む国際社会は事態の収束に向けて、両国に加え、米国に対しても責任ある行動を求めていくべきだ。