【10月4日付社説】再エネの導入拡大/先端技術の実用化後押しを

10/04 08:00

 最先端の太陽光発電技術の導入などにより、県内の再生可能エネルギーの普及拡大を加速させることが重要だ。

 県内の2023年度の再エネ導入量が150億2900万キロワット時となり、電力消費量約146億キロワット時を初めて上回った。25年度に導入割合を100%とする目標を2年前倒しで達成した。

 150億キロワット時は一般家庭約360万世帯が1年に使う電力量に相当する。実際には再エネでつくられた電気は県内外で消費されているものの、県内の約80万世帯に加え、工場などで使われる全ての電力を賄える計算になる。

 23年度の目標達成は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を契機とした再エネの普及拡大が着実に進んだ成果だ。

 大規模水力発電施設を除いた県内の再エネ導入量のうち、太陽光発電は約8割を占める。さらなる再エネの普及が必要とされる中、県内では大規模太陽光発電施設(メガソーラー)を整備できる適地が限られており、山地の開発に伴う景観や環境への影響などが課題となっている。

 再エネと地域の共生を図るために有望視されているのが、薄くて軽く、折り曲げられる次世代の太陽光発電設備「ペロブスカイト太陽電池」だ。従来の太陽光パネルでは設置が難しいビルの壁面や耐荷重が低い屋根などに貼り付けられるため、設置できる場所が大幅に増えることが期待される。

 一方、実用化に向けては発電効率や耐久性などが課題だ。国と県は年度内に、楢葉、広野両町のJヴィレッジ、福島市のあづま総合運動公園、会津若松市の県立博物館にペロブスカイトを設置する。気候の異なる3地域で実証事業を行い、課題の解決策を探る。

 国際的な開発競争が激しさを増すペロブスカイトの産業化は、国の重要課題でもある。国と県には、早期の実用化に向け、効率的な開発環境の整備などでメーカーを支援することが求められる。

 原発事故後、阿武隈山地などでは風力発電所の整備が進められている。共用送電線が完成したことで接続が進み、供給規模は今後大幅に拡大する見通しだ。

 浪江町では農業用の大柿ダムに建設されていた請戸川水力発電所が5月に完成した。農業用ダムに発電所を整備した県内初めての取り組みとして注目されている。

 再エネの大量導入を進めるには安定した発電と供給が欠かせない。県は、太陽光のみならず、風力や水力など発電方法の多角化を推進する必要がある。

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