【10月6日付社説】ガザ侵攻1年/イスラエル軟化に知恵絞れ

10/06 08:50

 中東全体が危機に陥っていることの根源にあるのが、ガザの戦闘だ。イスラエルとイスラム組織ハマスは停戦を呼びかける国際社会、仲介に当たる国の声に耳を傾けるべきだ。

 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で1年になる。ガザ側の犠牲者は4万人を超え、ハマスが人質として拘束していた人の死亡が確認されるなどしている。

 イスラエルメディアによると、ハマスに拉致された人質約100人がガザに取り残され、うち約30人は死亡したとみられている。避難民はガザ地区人口の9割、190万人に上る。

 このまま戦闘が続けば、人質や避難民の死者がさらに増えることは避けられない。一刻も早く停戦を実現し、人質の解放と、避難民の安全確保が図られるべきだ。

 戦闘の発端はハマスの奇襲であり、その非は免れない。ただイスラエルによる攻撃は、多くの住民を巻き添えとするものが多く、報復の範囲を明らかに超えている。

 イスラエルでは人質の遺体が見つかって以降、一斉ストライキや大規模デモが行われているものの、政府は停戦や戦線の縮小には消極的だ。その背景には、ネタニヤフ首相は政権に極右政党を抱えており、弱腰の姿勢を見せれば、政権が行き詰まるのを恐れていることがあると指摘されている。

 イスラエルがレバノンなどに戦線を拡大し、ハマスを支援する勢力への攻撃を強めているのも、政権維持の意図が影響しているとみられる。首相の保身のために、多くの人々の命を危険にさらしている状況は許されるものではない。

 戦闘が長期化してもハマスの抵抗が続いていることに加えて、戦線拡大で多方面に戦力が分散していることを踏まえれば、イスラエルが掲げるハマス壊滅と人質の解放も難しさを増しているというほかない。強硬な攻撃姿勢が、イスラエルに何の利益ももたらしていないことを直視すべきだ。

 戦線が行き詰まるなかでイスラエルが注力すべきは、攻撃をエスカレートさせることではない。人質を含めた国民の平穏な暮らしを取り戻し、中東情勢の緊張緩和に向けた姿勢を示すことだ。

 ただ、イスラエルが今、自ら矛を収めるのが難しくなっているのは否めない。1年にわたり事態を収束に誘導できていない、国際社会の責任は重い。イスラエルの態度をいかに軟化させ、中東情勢を沈静化するのか。日本を含めた国際社会の知恵が問われている。

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