有権者の生活や未来を大きく左右するテーマだ。財源などを踏まえた、地に足の着いた議論こそが求められる。
物価高への対応については、自民党が特に影響の大きい低所得者世帯への給付金支援を打ち出している。公明、国民民主の両党はガソリンや電気など燃料費に対する支援継続を掲げ、石破茂首相も同趣旨の発言をしている。
立憲民主党は収入に応じて、給付付き税額控除を行うとしている。日本維新の会、共産、国民の各党が消費税率引き下げ、ほかの野党も消費税の廃止や期間を区切って税率ゼロとすることなどを訴えている。
生活が困窮している層への支援は急がねばならないものの、新たな歳出増と歳入減につながる政策ばかりだ。しかし、その財源に言及していない党が多い。財源の裏付けを含めて語らなければ、掲げた政策は絵に描いた餅だ。
自民の公約などにみられる経済が成長すれば、税収などの増加につながり、財政の健全化に資するなどといった説明では、十分とは言えない。日銀は今年に入って、金利の引き上げに踏み切っており、国債についても利払いが増える見通しだ。支出に見合った効果が見通せなければ、これまでのように国債に頼るべきではあるまい。各党は財政を含めた経済再生の全体像を語るべきだ。
国内消費が力強さを欠くのは、消費者に今後の経済がどうなるかが分からないという、強い不安があるからだ。人口減少など経済が縮小する材料が山積するなかで、どう成長を担保するのかは、有権者の関心が高い点だ。
多くの党は、半導体を含むデジタルなど、成長が見込まれる分野への投資促進や、学び直し(リスキリング)の支援などを公約に盛り込んでいる。デジタルなどの分野の振興は世界各国が取り組んでおり、日本の新たな強みとするには、相応の戦略やさらに思い切った政策が必要となるだろう。
各党は目先の取り組みだけではなく、それによって経済をどう伸ばしていく考えなのかを示すことが大切だ。
賃上げについては、自民を除く主要各党が最低賃金を速やかに時給1500円まで引き上げるとの公約を掲げた。自民も金額を盛り込んではいないものの、引き上げる方針を明記している。中小企業などは、引き上げによって人件費の負担が大きくなるとの警戒感がある。中小・零細企業が持続できるようにしていくための政策も有権者にしっかりと訴えてほしい。