【10月29日付社説】衆院選・低い投票率/権利放棄が政治の緩み許す

10/29 00:00

 国の行く末を決める選挙に、半数近い有権者が背を向けた。各政党、候補者、選管などは現実を重く受け止めなければならない。

 第50回衆院選で、本県小選挙区の投票率は53・93%だった。2021年の前回を4・08ポイント下回り、過去2番目に低かった。

 自民党派閥の裏金事件を受けた政治改革が大きな争点となった。社会の耳目を集めた事件だけに、投票率が上がると予測した県内候補者の陣営は少なくなかった。

 一方、有権者が重視した争点は政治改革だけでなく、物価高や年金、子育てなど幅広かった。有権者にしてみれば、いつまでも「政治とカネ」問題を解決できない与野党の駆け引きに付き合わされた感があるのは否めない。結果として投票率は高まらなかった。

 政治離れに歯止めをかけることが急務だ。各党や候補者は、生活に直結する課題を解決し、政治への信頼を取り戻す必要がある。

 国政に関心があることを投票で示さなければ、議員の緊張感は失われる。棄権した有権者にはもっと政治への危機感を持ち、1票を投じてほしかった。

 本県小選挙区の投票率は、今回を含めて5回連続で50%台に低迷している。5回の選挙は12年前に自民が大勝して政権を取り戻し、長期にわたり単独過半数を維持してきた時期と重なる。

 裏金事件の根底には、「1強他弱」による自民のおごりがある。国会を軽視し、不祥事への批判にも意に介さぬような振る舞いで、自浄作用が働かない自民の体質的な問題が放置されてきた。

 今回は野党が自民への批判票の受け皿となり、与野党の勢力が伯仲する状況が生まれた。国会では厳しい政治改革の議論が展開されるはずだ。1票を積み重ねることで現状が変えられることを、有権者は改めて銘記してほしい。

 期日前投票所は約200カ所が開設された。このうち田村市の船引高生徒会館、三春町の田村高には1日ずつ投票所が設置された。18歳になった生徒らの政治への関心を高めるのが目的だ。ただ高校での設置は2校にとどまった。

 若者にとって候補者の政見、公約の違いなどは分かりにくい面があるだろうが、経験を積むことによって自分なりの判断基準が備わる。投票を通じて民主主義の大切さを実感することが、次の選挙での行動につながる。

 来年夏には参院選がある。より多くの若者が政治に対する権利を適正に行使できる有権者となるよう、各選管には若者の投票環境を充実させることが求められる。

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