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【12月15日付社説】12市町村の鳥獣対策/環境変化に応じ被害軽減を

2024/12/15 08:10

 県は、東京電力福島第1原発事故で避難指示などが出された12市町村の鳥獣被害対策の見直しを検討している。避難指示の解除が進んだことなどを踏まえた対応で、分析した課題を来年度に策定する新たな広域戦略に盛り込んでいく考えだ。

 12市町村では近年、ツキノワグマやニホンジカなども確認され、従来からの有害鳥獣の生息域も広がりつつある。なかでもニホンザルは、復興庁の調査で平野部への進出が認められ、42の群れに約2600頭がいることが分かった。直近の県による調査の中間報告によれば、群れの数は53に増加しており、対策が急務になっている。

 市町村の現場からは、サルが住民を威嚇したり、物を壊したりするなど数値化できない被害が課題との声が上がっている。サルの出没が心理的な圧力となり、住民帰還が妨げられることは避けなければならない。県は新たに避難指示が解除された特定復興再生拠点区域(復興拠点)を中心に追い払いを強化していくことが重要だ。

 これまでの鳥獣被害対策の主な対象は農作物の食害などを引き起こすイノシシで、関係機関が重点的に捕獲などを実施してきた。県によると、12市町村での捕獲頭数は2020年度の約1万1千頭をピークに、22年度には1628頭に激減しており、目標としていた市街地からのイノシシの排除をほぼ達成した状況になっている。

 ただ、イノシシの減少は対策に加え、自然界での豚熱の感染拡大が影響したとの見方がある。イノシシは繁殖能力が高く、他県では頭数が回復して再び被害が発生した事例があるという。県と関係市町村には、油断することなく捕獲や侵入を防ぐ緩衝帯の設置などを継続し、イノシシの封じ込めに全力を挙げることを求めたい。

 捕獲などの対策を担う12市町村の狩猟免許所持者の現状をみると、70歳以上の割合はおおむね4~5割程度で、中通りや会津地方の3~4割と比べると高齢化が進んでいる。また、1人当たりのイノシシの捕獲頭数は中通りや会津地方が4~10頭であるのに対し、12市町村では10頭を超えており、負担が大きくなっている。

 鳥獣被害対策の実施には、市町村職員や住民の積極的な参加が有効な手だてだが、被災地では定住人口が少ないという課題もある。県は国と連携し、調査や捕獲を担う民間専門業者の導入、市町村の枠を超えた集中的な捕獲体制の構築などを積極的に支援し、中長期的な取り組みができる枠組みをつくっていく必要がある。

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