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【9月18日付社説】国見の救急車問題/町民への説明責任を果たせ

09/18 08:05

 公募手続きに問題はないとする説明には無理がある。町が認識を改め、説明責任を果たすことなしに、町民の信頼回復はない。

 官民連携で開発した高規格救急車を貸し出す国見町の事業が頓挫した問題を巡り、町の第三者委員会が調査報告書をまとめた。報告書は「官製談合が行われたとまではいえない」としつつ、公募に関する救急車の仕様書作成を助言した企業が受託者となったことから「手続きの公正性・透明性を欠くものであった」と指摘した。

 報告書によると、受託企業との調整は主に1人の職員が担い、癒着が疑われたり、企業に意のままに操られたりする恐れがあった。他社が参入を検討するには公募期間が短過ぎた、重要施策にもかかわらず町執行部による庁議で事業の基本方針がほとんど協議されなかったなどの問題も指摘された。

 調査特別委員会(百条委員会)で問題を追及してきた町議会に続き、第三者委からも手続きなどの問題点を指摘された形だ。不適切な行政運営で事業を推し進めた引地真町長の責任は重い。

 町は企業版ふるさと納税で寄せられた約4億3千万円を事業費に充てた。しかし受託企業の前社長が「行政機能を侵食する」などと発言していたことが分かり、契約の解除に至った。

 第三者委は町長の責任に言及しなかった一方、百条委は出処進退の判断を迫った。引地町長は福島民友新聞社の取材に、受託企業と町の一連の事業の問題を検討し、「対応策を考えることが町長の役割。辞めて終わりだとは考えていない」と述べ、辞職を否定した。町長の任期満了となる11月までに対応策を協議するとしている。

 再発防止策の策定は当然で、町長を含む特別職や管理監督者の処分など行政組織としての責任の取り方もある。引地町長はどう対処するのか、早期に示すべきだ。

 第三者委は、町議会と町監査委員の監視機能が不十分だったことも問題視した。寄付金の活用で町の財政支出が抑えられることを背景に吟味が甘くなり、町議会は事業計画の不備をただせぬまま、予算を可決した。

 町内の小中学校や幼稚園などを一体化する構想を巡っては、救急車事業の受託企業の関与を疑う声がある。町は、直接の関与を否定しているものの、町民への説明不足などを理由に計画を凍結し、議論を仕切り直すとしている。

 議会と監査委員の存在意義が問われている。疑念が残らぬよう議論を尽くし、監視機能を果たさなければならない。

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