8人が廃炉作業「50点以下」
福島民友新聞社が衆院選県内4小選挙区の11候補に実施したアンケートで、東京電力福島第1原発の廃炉を巡る政府と東電の取り組みについて評価を点数(100点満点)で聞いた結果、8候補が50点以下と判断した。ミスやトラブルが相次ぐ廃炉作業の現状に厳しい視線を向けている。
廃炉の最難関とされる溶け落ちた核燃料(デブリ)を巡り、東電は8月に2号機で試験的取り出しに着手する予定だったが、人為ミスで延期となった。9月には取り出し装置のカメラの不具合で再び作業を中断、再開のめどは立っていない。
50点をつけた自民党の2区・根本拓候補は「トラブルが生じているのも事実で廃炉プロセスを加速させる必要がある」との認識を示した。40点とした立憲民主党の2区・玄葉光一郎候補は「初歩的なミスなどトラブルが相次いでおり、是正しなければならない」と指摘した。30点と評価したのは2候補で、自民の1区・亀岡偉民候補は「現場経験者と有識者を活用し、より実践的な計画を立てる必要がある」、立民の1区・金子恵美候補は「デブリの取り出しも順調ではなく、廃炉工程に遅れが生じている」とした。立民の3区・小熊慎司候補は10点をつけ「東電の準備不足が露呈し、国の指導不足や無責任さがうかがえる」と批判した。
共産党の3候補の評価は0~28点だった。2区・丸本由美子候補と3区・唐橋則男候補は「度重なるトラブルの報告遅れや隠蔽(いんぺい)で国、東電に対する県民の信頼は失墜している」、4区・熊谷智候補は「廃炉に向け、最大の責任を負うべき政府と東電が責任を果たしているとは到底言えない」とした。
50点を超える評価をしたのは2候補で、最高点の79点をつけた自民の4区・坂本竜太郎候補は「安全優先で着実に進めている」と評価する一方で「一層の緊張感の維持が重要」と強調。無所属の3区・上杉謙太郎候補は60点とし「非常に難しい技術で、今後も国が前面に立って安全・着実に進める必要がある」とした。
立民の4区・斎藤裕喜候補は点数をつけず「経験のない作業」として、今後の安全な作業を求めた。
最終処分 8人「進んでいない」
県内の除染で出た土壌などの県外最終処分は法律に明記された2045年3月の期限まで残り20年余り。政府の最終処分実現に向けた取り組みについて、8候補が「思うように進んでいない」との認識を示した。
野党候補はいずれも進展状況に懸念を示した。立憲民主党では、金子恵美候補が「全国的な理解醸成への取り組みが不十分」、小熊慎司候補は「全国民的な理解が深まったとは言えず、候補地の選定も進んでいない」とした。玄葉光一郎候補は「『もう20年しかない』という危機感を持って対応するべきだ」と促した。斎藤裕喜候補は「地域住民の意見も重視し、最善の方策の再検討が必要」と指摘した。
共産党では、丸本由美子候補と唐橋則男候補がともに「最終処分の在り方は県民、国民の意見をよく聞くことに徹することから始めるべきだ」と強調。熊谷智候補は「出発点に立ち返って国と東電が責任ある議論をするべきだ」と問題提起した。
自民党では唯一、坂本竜太郎候補が「思うように進んでいない」と答え「理解を促進するための工夫と粘り強い努力が必要」と求めた。
自民の亀岡偉民候補と根本拓候補、無所属の上杉謙太郎候補は「どちらとも言えない」を選んだ。その上で、亀岡候補は「説明責任と理解構築」、根本候補は「最終処分に向けた議論の加速」、上杉候補は「公共事業での再生利用に理解を深める取り組み」の必要性を挙げた。
夫婦別姓、野党7人「導入」
夫婦が希望すれば結婚前の名字を名乗れる選択的夫婦別姓制度への賛否を尋ねると、野党の7候補全員が「導入すべきだ」と答えた。
制度を巡っては、石破茂首相が自民党総裁選で導入に前向きな姿勢を見せたが首相就任後は発言が慎重になっている。自民の亀岡偉民候補と根本拓候補、無所属の上杉謙太郎候補は「どちらとも言えない」とし、自民の坂本竜太郎候補は唯一「導入の必要はない」との考えを示した。
一方、憲法改正の是非を巡り、立憲民主党の4候補で意見が分かれた。小熊慎司候補が「改正は必要」との見解を示したのに対し、斎藤裕喜候補は「必要ない」と答えた。金子恵美候補と玄葉光一郎候補は「どちらとも言えない」を選んだ。
自民の3候補と上杉候補は「改正は必要」と回答した。共産党の3候補は「必要ない」で一致した。
政府の人口減対策 9人「十分でない」
政府の人口減少対策について、9候補が「十分とは言えない」と答えた。「どちらとも言えない」が2候補で、「十分」と回答した候補はいなかった。
人口減少対策で最も必要な施策として、最多の5候補が「出産・子育て対策」を重視。このほか「雇用の場の確保」や「教育環境の整備」を求める意見が目立った。
政治資金規正法 「評価する」ゼロ
自民党派閥裏金事件を受けて成立した改正政治資金規正法の評価について、改正の内容を「評価する」と回答した候補者は一人もいなかった。
選挙戦では「政治とカネ」の問題を受け、政治改革が大きな争点の一つとなっている。
野党の7候補はいずれも改正の内容を「不十分」と答え、政策活動費の廃止や収支報告書の抜本的見直しなど再改正を求める声が多かった。
自民党では、4区・坂本竜太郎候補が「不十分」と回答。自民と無所属の3候補は「どちらとも言えない」としたが、使途の透明性確保に向けた継続的議論や抜本的な議論を踏まえた改正の必要性などを指摘した。