福島県二本松市出身で、米イェール大教授を務めた世界的な歴史学者朝河貫一の名前が付いた小惑星「Asakawa(アサカワ)」が誕生した。「自分が亡くなれば、世界を照らす星となるのだ―」。75年以上の月日を経て、朝河が晩年に詠んだ長歌に込められた願いは星となって実を結んだ。
朝河貫一博士顕彰協会の甚野尚志会長やNPO法人「地域のみんなのチカラ」のメンバー、甚野源次郎元県議が7月、顕彰活動について協議していた際に、朝河が詠んだ長歌「光満ちわがたまつゐに融くる時、われも世を照らす星とならむか」が話題に挙がったことがきっかけだった。
朝河の思いを実現しようと、甚野元県議の知人である田村市星の村天文台の大野裕明名誉台長を通じ、札幌市のアマチュア天文家渡辺和郎さんが見つけた小惑星の命名提案権を譲り受けた。9月に国際天文学連合の担当の委員会に申請、10月14日に認定を果たした。
大野名誉台長によると、「Asakawa」は直径約5.5キロで、太陽の周りを約3.7年かけて1周する。肉眼で見られる星の明るさは6等星までとされており、「Asakawa」は17等星と暗いため、肉眼で見ることはできない。ただ、大野名誉台長は「ここ1カ月は明るく輝く木星のそばにあるので存在を感じてほしい」と語る。
朝河は戦前の日本の状況に警鐘を鳴らし、昭和天皇宛ての米大統領親書草案を書き上げるなど、日米開戦回避のために尽力した。甚野会長は「最後まで平和を願った福島の偉大な歴史学者が星になって私たちを照らし、見守ってくれるだろう」と思いを巡らせた。