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【新まち食堂物語】レストラン立美・二本松市 街の洋食屋さん...半世紀

06/09 09:30

「街の洋食屋さん」として創業当時の味を守り続ける菊地義克さん(左)と妻美佐子さん(石井裕貴撮影)

 「街の洋食屋さん」として親しまれる「レストラン立美」は、二本松市榎戸の国道4号沿いに店を構える。東京都内の洋食店で料理の腕を磨いた店主の菊地義克さん(79)が古里で店を開きたいと、一緒に働いていた妻美佐子さん(79)と共に1972年4月に開業した。当初は貸店舗からのスタートを考えていたが、義克さんの父の故正義さんと兄国男さん(82)の協力で客席90席の店を新築した。「幼児がいる家族連れなどにもゆっくりと食事を楽しんでもらいたい」。オープンを控え、義克さん夫妻は都内の店を巡り、どんな店がいいか研究を重ね、喫茶スペースや座敷、食堂の3種類のスペースを設けた。店名には修業先の洋食店「立田」から一文字をもらい、「美しく立(建)っていられるように」との願いが込められている。

 オープン当初はレストランがまだ珍しく、昼は近くのサラリーマン、夜は家族連れ、休日はデートで訪れる若いカップルなどで店は繁盛した。美佐子さんは「当時は家族で外食が珍しかった時代。お正月や誕生日など特別な日のご褒美として家族で食べに来るお客さんも多く、とてもうれしかった」と振り返る。

 手間暇惜しまず

 メニューはビーフ、ポーク、チキンの肉料理をはじめ、魚を使った各種定食、スパゲティ、グラタン、サンドイッチに加え、フルーツパフェやホットケーキといったデザート類まで多彩なラインアップ。揚げたてのエビフライと、ヒレカツかハンバーグを組み合わせた欲張りなミックス定食などが人気を集める。全メニューがテイクアウトできるのもうれしい。「創業当時からの味を守り続ける」と話す義克さんのこだわりで、店のカレールーやホワイトソースなどは手間暇を惜しまず全て手作り。「調合の味が変わってしまうから」と、ソースやしょうゆなどの購入する調味料は一切変えていない。

 平日昼と土、日曜日、祝日は義克さん夫妻と娘の3人、平日夜は義克さん夫妻で店を切り盛りする。店は休憩なしの通し営業で応対しており、美佐子さんは「混雑時を避け、ゆっくりと食事を楽しみたい方は午後2時~同5時ごろに来店してほしい」とお勧めする。

 体が続く限りは

 店は4月で52年を迎えた。美佐子さんいわく、「初デートで利用した」と話す団塊世代の夫婦や「『子どもの頃、両親に連れてこられた時に食べたナポリタンの味が忘れられない』と、自分の子どもや孫を連れて訪れるお客さんも多い」とのこと。

 美佐子さんは「開店してから最初の3年間は、とにかく店を建てた借金返済のため休みなしで必死に働き、気が付けば今になった」としみじみ語る。「夫婦共に元気で今が一番楽しい」と話す一方、「苦しいのは混雑時にお客さんを待たせてしまうこと」と、あくまでお客さまファーストの姿勢を貫く。「この先、何年続けられるか分からないけれど、店を愛してくれるお客さんのためにも、これからも体が続く限り頑張っていきたい」。義克さん夫妻は今日も変わらぬ味を提供する。(飯野大輔)

お店データ

レストラン立美

■住所 二本松市榎戸2の58

■電話 0243・22・4591

■営業時間 午前11時~午後8時(ラストオーダー午後7時半)

■定休日 隔週木曜日

■主なメニュー
▽ミックス定食A(エビフライ・ヒレカツの盛り合わせ)=1550円
▽ミックス定食B(エビフライ・ハンバーグの盛り合わせ)=1550円
▽ナポリタン=850円
▽チキングラタン=880円
▽フルーツパフェ=600円

レストラン立美揚げたてのエビフライとハンバーグを組み合わせたミックス定食B(手前)。ナポリタン(奥)はソースをかけて食べるのが立美流。サンドイッチなど洋食メニューが充実

 店内は昭和レトロ

 最近では、開店当時から変わらない古き良き昭和レトロ風情の店内が交流サイト(SNS)などで話題となり、若い世代の客も増えた。「自分たちはこれまで通りやってきただけなのに不思議。古いだけですよ。半世紀を経た店の雰囲気がいいのかな」と美佐子さんは笑う。

レストラン立美

          ◇

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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