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「音の架け橋」最後まで 県警音楽隊指揮者の白岩さん、本年度末退任

06/18 11:35

「後輩たちに歴史をつないでいきたい」と指揮を執る白岩さん

 「これまでの歴史を後輩たちに伝えていきたい」。福島県警音楽隊指揮者の白岩仁さん(65)は通算37年務めた音楽隊を本年度末で退く。7月で県警発足70年を迎える節目の年度と退任が重なった。県民と警察を結ぶ「音の架け橋」として活動しており「最後まで走り抜ける。一生懸命やるってことかな」と笑みを浮かべる。

 白岩さんは1978年に県警採用、翌79年に音楽隊に指名された。小中学校のボーイスカウト活動でラッパ隊に入っていたが「全然うまくなかった」と振り返る。「2、3年でクビかな」と思っていたとき、地方で開かれた演奏会で自分たちの演奏を、涙を流して聞いてくれた住民がいた。さまざまな部門がある警察組織で「目の前で直接、拍手をもらえるのが音楽隊かもしれない」と感じたという。

 白岩さんにとって演奏で喜ぶ住民の姿が活動の原動力となった。隊ではトランペット、テナーサックスを担当。途中で9年間、隊を離れたが、再び入隊して楽長を7年間担った。警察官退任後も再任用職員として音楽隊に所属している。

 指揮者として心がけるのは「どう演奏すれば喜んでもらえるか」。指揮者の経験はなかったが、演奏中は視線を全体に巡らせ、体いっぱいに指揮棒を振って隊員たちを引っ張る。「自分が若い頃より、みんな上手なんだよ」と誇らしげな白岩さん。残り約9カ月の活動期間で自身の経験とともに、音楽を通じた住民との交流の尊さを若い世代につないでいく。(影山琢也)

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