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【新まち食堂物語】ログハウスどんぐり・三島町 地鶏提供「町の名物」に

06/30 11:30

店内に立つ店主の海老名さん(左)と妻陽子さん。会津地鶏のうまみを生かした絶品料理で客の胃袋をつかむ(吉田義広撮影)

 ヒロロやヤマブドウなどの植物を素材にした「奥会津編み組細工」の産地として知られる三島町。多くの作品を展示・販売する町生活工芸館の敷地内に、山小屋風の建物が目を引く「ログハウスどんぐり」はある。町特産の「会津地鶏」を扱う店としても有名で、町内外から名物の味を求める人たちが集まる。

 1987年6月に、生活工芸館がオープンするのに合わせて店を出した。当時は山菜を使ったピラフやトーストなど軽食を中心に提供していた。店主の海老名健さん(73)は「店をやるからには店の名物が必要だと思い、地鶏に目を付けたんだ」と会津地鶏を扱い始めたきっかけを明かす。現在は町内でも会津地鶏を扱う店は複数あるが、初めてメニューとして提供を開始したのはどんぐりだという。「町の名物として定着してくれてうれしいね」と海老名さん。「発祥の店」でありながらも控えめに語る姿に優しい人柄がにじみ出る。

 素材の味生かす

 会津地鶏のもも肉を使った塩焼きが一番人気。「素材の味がいいから」と、海老名さんは塩をぱらっと振るだけのシンプルな味付けで調理している。その代わり、皮から火を入れ、肉には火が通り過ぎないよう絶妙な焼き加減を心がけている。

 塩焼きを口にすると、奥歯をはじき返すような弾力に驚かされる。かみ切ると口の中に鶏のうまみと香りが広がり、塩のみの味付けでもご飯をかき込みたくなる。地鶏料理は塩焼きだけでなく、胸肉を使ったから揚げもある。さくさくの衣に包まれ、胸肉の欠点とされるぱさぱさ感は全くない。

 扱う食材は地元産にこだわる。地鶏料理とともに人気のある、そばも町内で栽培するものを使用している。付け汁には地鶏の脂が使われており、そばの香りと鶏のこくが楽しめる。付け合わせには、海老名さんと妻陽子さん(69)が自宅で栽培する野菜も使用しており、地元へのこだわりと愛情が感じられる。

 全国からファン

 台湾出身の歌手、故テレサ・テンさんが77年に、全国に先駆け「ふるさと運動(特別町民制度)」に取り組んでいた町を訪れた。町は「テレサさんゆかりの地」のPRに力を入れ、全国からファンが訪れたり、テレサさんにちなんだイベントを開いたりしている。どんぐりを始める前に、町の観光協会に事務局員として勤めていた海老名さんは、来町したテレサさんのアテンド業務などを担ったという。「自分は使いっ走りで、あまり言葉も交わすことができなかった」と当時を懐かしむ。

 テレサさんは95年に42歳の若さで亡くなり、海老名さんが会津地鶏を振る舞うこともできなくなってしまった。「生きていれば、ぜひ食べてほしかった」。海老名さんは店内に飾られたテレサさんのサインを見つめながら少し寂しそうにつぶやいた。

 地鶏やテレサさん、編み組細工のファンらが全国から訪れるどんぐり。「今は毎日が出会い。気軽に来られる店としてやっていきたい」と海老名さん。後継者はいないというが、体が続く限り三島ならではの絶品料理を提供し続ける。(鹿岡将司)

お店データ

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■住所 三島町名入字諏訪ノ上410

■電話 0241・52・2932

■営業時間 午前11時~午後2時

■定休日 月曜日 

■主なメニュー
▽もも肉塩焼き定食=1300円
▽むね肉カラあげ定食=900円
▽地鶏セイロそば=1000円
▽特製カレーライス=800円

240630syoku022.jpg三島町産の会津地鶏を使ったもも肉塩焼き定食

 店名土地にちなみ

 丸太を積み上げたような外観が特徴のどんぐり。元々ドングリがなるナラ林に店舗を建てたため、土地にちなんだ店名にした。周りはナラの木が林立し、三島町の一大イベント「工人まつり」開催日には全国から集まった工芸品が木陰にずらりと並ぶ光景を楽しむことができる。

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          ◇

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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