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【7月21日付社説】いわきの臨時集積所/災害ごみ処理の加速化図れ

07/21 08:05

 いわき市は、災害で生じた廃棄物を持ち込むことができる「臨時集積所」を地区ごとに設ける。設置場所は住民が地区内の公園や空き地などから選び、市に届け出る仕組みだ。市によると、住民主体で臨時集積所の場所を事前に決める取り組みは全国初という。

 災害廃棄物の集積場所は、原則として市が設置する「仮置き場」となる。安全に運び込む環境を整えるための準備に2日かかるとされ、市は可能な限り速やかな仮置き場の開設を目標としてきた。しかし、昨年の台風13号では、仮置き場の運用前に復旧を急ぐ市民が自宅から廃棄物を搬出し、ごみが街中にあふれる事態となった。

 これまでは、廃棄物の量が多いなど、やむを得ない場合などに限り暫定的に臨時集積所を開設してきた。今回の取り組みは、臨時集積所を地区のごみの搬出先として事前に確定することで、仮置き場ができるまでの制度上の空白を埋める効果がある。市は浸水想定区域を中心に住民との話し合いを急ぎ、秋の台風シーズンまでに十分な臨時集積所を確保してほしい。

 住民が決めた臨時集積所の場所は、基本的に市の担当部署と地区内でのみ情報共有し、別の地区からの投棄は認めない形にする。災害時には、地区の事情に応じ住民が開設の是非を判断する。臨時集積所ではごみの分別管理や開設に便乗した不法投棄を防ぐ巡回などが必要になるが、市はこれらの運用も住民に協力を求める考えだ。

 地区の事情をよく知る住民が臨時集積所の場所を決め、運営に関わるのは理想的な取り組みだが、設置される時は住民自身が被災していることを忘れてはならない。市は、事前の効果的な運用方法の周知に加え、災害対策本部の担当班からの人員派遣などで手厚く支援し、可能な限り住民の負担軽減を図っていくことが重要だ。

 臨時集積所に集められた災害廃棄物は、市や市と協定を結んだ業者らによって仮置き場に搬出される。設置期間は廃棄物の量などによって決まるが、分別されていない場合には運び出しに時間がかかるケースも出てくるという。全ての廃棄物がなくなった後、市が使用前の状態に戻す原状回復の対策を取り、集積所の役割は終わる。

 自然災害からの復旧復興の第一歩は、生活空間に近い場所からの廃棄物の撤去だ。市は、現在11カ所ある仮置き場候補地のさらなる選定や廃棄物運び出しのスピード化を講じるなどして、住民の理解を得て設置する臨時集積所の早期解消を目指すことを改めて肝に銘じてもらいたい。

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