南相馬市が、国際的な教育プログラム「国際バカロレア(IB)」を市内の小学校に導入する方針を決めた。対象校や時期などについては未定だが、導入されれば県内初の取り組みとなる。
IBは、スイスのジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する教育プログラムで、幼稚園・小学生から年代別に四つの段階がある。高校生対象のプログラムで一定の成績を確保した生徒は、海外大学を含むIB入試の出願資格を得られることから、文部科学省がグローバル人材育成の手法として普及拡大を進めている。
また、IBは複雑化する国際社会に対応するため自ら考え、コミュニケーションできる子どもの育成を主眼としている。文科省の学習指導要領でも同様の目標を掲げるが、IBは年代ごとに身に付けるべき視点や考え方などが明示されており、現場がより効果的に探究型の授業を実施しやすいプログラムとの指摘もある。
IBは160以上の国や地域で5800校以上が実践しているが国内の公立校での導入実績は少なく、市の判断は特色ある教育環境をつくる取り組みと評価できる。市には、東日本大震災からの地域再生などの浜通りの課題に向き合い、柔軟な解決策を導き出せる子どもたちの育成に向け、IBの導入を着実に進めてもらいたい。
小学生向けのIBのプログラムでは、「私たちはどのような場所と時代にいるのか」「世界はどのような仕組みになっているか」など六つの教科横断的なテーマがある。市で導入する場合には国語や算数などの教科や総合的な学習の時間の中にIBのテーマで求められる要素を落とし込み、探究型の学びを提供するカリキュラムをつくることになる。
IBの授業では単に知識を伝えるのではなく、児童が課題について問題意識をもって考えられるよう導いていく教え方が求められるという。市には、子どもと伴走しながら自由な発想を引き出す「問いかけ」の手法を充実させる研修の実施などを通じて、これまで以上にそれぞれの教員の指導力を向上させていくことが求められる。
IBは教育を通じて、自分が所属する社会や地域に貢献できる資質を養うことも重視している。県外の導入先進地では、子どもが学びを深める中で地元企業や住民と交流する機会が増え、学校と地域との距離が縮まった事例があるという。市はIBの導入を契機として、地域ぐるみで充実した教育を実践していく風土づくりにも取り組んでいくことが重要だ。