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【7月29日付編集日記】辛苦の結晶

07/29 08:05

 額に汗して人力で作られた塩は辛苦の結晶と言える。「塩田に百日筋目つけ通し」。俳人沢木欣一は、石川県能登地方に伝わる揚げ浜式製塩の句を詠んだ。くみ上げた海水を塩田に振りまき、熊手のような道具で砂に筋を付けては、乾かす作業を何日も繰り返す

 ▼「水塩の点滴天地力合(あわ)せ」。大量の砂を木枠に集めて海水を流し込み、塩分の濃い水を取る。夏の日差しの力も借りて得た水塩を長時間、釜で煮詰めることで白く輝く結晶が出来上がる

 ▼高校野球福島大会がきのう、閉幕した。捕手を信じて腕を振る、フルスイングで打ち返す、白球を逃すまいと食らいつく―。選手たちのプレーで飛び散った汗の一滴一滴が、グラウンドに染み込んだことだろう

 ▼決勝は出場した62チームの夏に懸ける思いが凝縮された舞台。先制した聖光学院がさらに突き放す展開になるかと思われた。しかし学法石川はエースや守備陣が粘り、追加点を許さなかった。均衡が崩れそうで崩れず、煮詰まった緊迫感に応援する側も手に汗握った

 ▼3年連続の優勝となった聖光ナインの結束は流した汗の分、強く固くなったはずだ。次は熱気が最高潮に達する甲子園。全国の強豪を凌(りょう)駕(が)する輝きを放ってほしい。

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