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【8月3日付編集日記】先導役

08/03 08:00

 国元と江戸を往復する参勤交代は、二地域居住のはしりと言えなくもない。華やかな動きで人目を引く奴(やっこ)隊の先導で、大勢の家臣らと相応の日数をかけ行き来するのだから、一大事業だった。松江藩の例だと現在の金額で4、5億円ほどかかったという

 ▼大きな出費だが、実は藩財政を一番圧迫していたのは家臣らが江戸で暮らす費用。大都市の生活を満喫していたようで娯楽費の支出が多かった。仕事の合間に歌舞伎や寄席などを楽しみ、国元からは買い物の注文も絶えなかった(山本博文「教科書には書かれていない江戸時代」東京書籍)

 ▼人口動態調査で、外国人を除いた日本人の減少幅が調査開始以降、最大となった。本県の人口も減少率が高く、社会減は2年連続で全国最多だった。若年層の県外流出に歯止めがかからない現状が浮き彫りになった

 ▼希望する進学先や就職先が地元にないなどの理由で、大都市に出ていく若者は多い。生活費がかさんで大変―といった嘆きも聞こえてくる

 ▼参勤交代は負の側面ばかりでなく、街道整備や宿場町の発展をもたらした。どこへでも容易に行き来できる時代に、二地域居住の流れがどう広がり効果を上げるか。先導役がもっと増えれば。

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