• X
  • facebook
  • line

【8月6日付編集日記】原爆の日

08/06 08:25

 SF作家の小松左京は、人間の生物としての最も大きな武器は知力ではなく、洞察力だろうと指摘する。そうでなければ複雑化していく文明の中で相手を思いやり、子孫を残すことはできないはずだと

 ▼一方で、人間は歴史の中で目を背けたくなるような行為もしてきた。小松は巨大化した文明が、人間の洞察力では処理できないほどになっているのではないかと危惧していた(「宇宙にとって人間とは何か」PHP新書)

 ▼79年前の8月6日、広島市に原子爆弾が投下された。爆発とともに強烈な熱線と放射線が放出され、爆心地周辺の地表面温度は3千~4千度に達した。死亡者は正確に把握されていないが、その年の12月までに約14万人が亡くなったとされる

 ▼倒れた家の下敷きになり、生きながら焼かれた人が助けを呼ぶ。熱風で大きなやけどを負い、皮膚をぶら下げたままの多くの人があてどなくさまよう。被爆した人の証言記録を読むと、地獄とも言える惨状が目に浮かんでくる

 ▼ロシアのウクライナ侵攻など不安定な国際情勢を受け、核兵器の使用を危ぶむ声がある。社会が複雑化しようとも、人間の洞察力はまだ働くはずだ。核兵器はいつどこであれ、使われてはならない。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line