【8月8日付社説】全国学力テスト/つまずき生かす授業つくれ

08/08 08:05

 小中学校を通じて身に付ける基礎的な知識や考え方は、より高度な学びや社会での生活を支える土台となる。児童生徒の将来の可能性を狭めぬよう、一人一人の学力を底上げすることが急務だ。

 小学6年と中学3年を対象とした文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、県内の国語と算数・数学の平均正答率がいずれも全国平均を下回った。算数と数学は平均を大きく割り込み、長年の課題となっている低迷傾向は改善されなかった。

 学習状況の質問調査では、「どちらかといえば」を含め、算数が好きと答えた県内の児童の割合が全国平均を上回った。一方、授業の内容が「よく分かる」と回答した割合は平均を下回った。

 県教委によると、児童の関心を高める指導はできているものの、つまずきが解消されないまま授業が進んでいる可能性がある。基礎が不十分なため、中学でも課題への対応が難しく、結果として数学が好きと答える生徒の割合が全国平均より低い傾向となる。

 児童生徒が授業を理解したか目配りが欠かせない。各学校は、教員の指導方法を検証し、つまずきを乗り越え、学ぶ意欲が高まる授業へと改善することが重要だ。

 県教委は算数・数学の学力低迷を受け、指導主事でつくる研修支援チームを学校の要請に応じて派遣して指導方法を助言したり、校長経験者をアドバイザーとして配置したりしている。これまで支援を受けた学校では学力向上の成果が確認されているという。

 2学期からは支援に当たる担当者の増員に加え、対象科目を国語にも拡大して支援体制を強化する。県教委には、要請を待つのではなく、学校の主体性を尊重しつつ、支援チームなどの活用を促す取り組みが求められる。

 文科省の分析によると、考えをまとめて発表する授業で情報通信技術(ICT)機器を活用した学校ほど、各教科の正答率が高い傾向となった。疑問点をタブレット端末ですぐに調べたり、オンライン学習で他校の児童生徒と意見を交換したりすることで、学びが深まっているとみられる。

 パソコンやタブレット端末を授業で「ほぼ毎日」使った県内の児童生徒の割合は、昨年度と同様に全国平均を下回った。活用が進まない要因の一つに、教員の苦手意識があると指摘されている。

 教える側がICTの利用に消極的なために学力差が生じることがあってはならない。各学校には、ICTを学習の選択肢に入れ、児童生徒に提供する責任がある。

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