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聖光学院・高野、極めた緩急で8回11K 夏の甲子園

08/12 11:30

【聖光学院―鶴岡東】6回表鶴岡東2死、打者3人で抑えた聖光学院の先発高野(左)とハイタッチを交わし、ベンチに戻る捕手佐藤

 聖光学院は11日に行われた全国高校野球選手権大会1回戦で、鶴岡東(山形)との東北勢対決に1―2で敗れた。同日は鶴岡東に加え、早実(西東京)大社(島根)創成館(長崎)が2回戦に進出した。

 魂の高速スライダー

 エースとしての覚悟と決意が詰まった114球だった。聖光学院のエース高野結羽(ゆう)(3年)は8回を投げ、毎回の11奪三振と快投。しかし三回に失った2点が勝敗を左右し、「悔しいです」。このひと言に尽きた。

 圧巻だったのは五、六回。「高速スライダー」(斎藤智也監督)と言わしめる武器の130キロ台のスライダーなどで六回1死まで4者連続三振を奪い、いずれの回も3者凡退で切った。

 悔いが残るのは三回の守備だ。無死一塁で相手がバントした球をうまく捕球できず、失策でピンチをつくった。すかさず捕手佐藤羅天(らま)(3年)が高野の元へ駆け寄り、笑顔で言葉を交わした。その後、アウトを重ねたが、2死二、三塁で相手の主砲に殊勲打を浴びた。「自分の弱さを相手に突かれた」。8回を投げきってマウンドを降りると、ベンチで涙を流しながら、仲間の奮起を願った。

 「良い球持っているのにださいよ」。今年の春に仲間から言われたこの言葉が高野を成長させた。完璧主義で「自分が抑えないと」という思いが強すぎるあまり、昨秋は四死球や失策で自滅することがあった。斎藤監督からも「一人相撲の投手はいらない」と厳しい言葉をかけられた。

 独りよがりにならず、佐藤の配球と守備を信じて腕を振るようになった。自分から野手陣に声をかけるなどマウンドでの振る舞いに変化が現れると、自然と投球内容も良くなった。福島大会は初戦を完封、決勝も86球で完投した。この日の四死球は1。福島大会決勝に続く好投に指揮官は「マウンドで動じなくなったのが1番の成長」とうなずいた。正真正銘、名門聖光学院のエースとなった高野。最後は堂々とまっすぐ前を向いて言い切った。「やりきった。聖光らしく、甲子園で戦えた」(熊田紗妃)

 【評】聖光学院は相手エースを打ちあぐね、終盤の連打も及ばなかった。初回と二、七回はいずれも無死一塁から走者を得点圏に進められなかった。2点を追う八回1死二、三塁から菊地の内野ゴロの間に1点を返したが、九回は1死一、二塁の好機で併殺に倒れた。先発高野は140キロ台の直球と多彩な変化球を駆使し、8回を投げて11奪三振の力投。三回に自身の失策から失った2点が重かった。(熊田紗妃)

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