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【8月15日付編集日記】終戦の日

08/15 08:05

 ヘンゼルがポケットに詰めた小石を道に落とす。継母の悪巧みで、ヘンゼルとグレーテルの兄妹は山奥に置き去りにされたものの、小石を頼りに家に帰る。グリム童話の一場面である

 ▼兄妹は再び山奥に連れていかれる。小石を準備できなかったヘンゼルは次の手を考える。なけなしのパンをちぎり、道しるべにした

 ▼1940年、日本は対英米路線の傾向が強くなり、日独伊三国同盟に慎重な海軍の立場は揺らいでいた。開戦のブレーキ役となるはずだった海軍は、勝利の確信がないまま、大した議論もせず同盟になびく。作家の半藤一利さんは、ここに大きな問題があったと指摘する

 ▼海軍が賛成したのは、同盟が成立せずに内閣が倒れた際の責任を取りたくない、軍備増強の予算が欲しい―など内向きの理屈だった。歯止めがきかなくなった日本は、引き返すことのできない亡国への道を突き進んだ(「昭和史」平凡社)

 ▼終戦から79年。自衛隊や在日米軍が、台湾有事などへの備えを強化している。有事となれば、米国の求めに応じる形で、日本が戦闘に参加する恐れは否定できない。考えるべきは戦争を回避する手だて。歴史に学び続けたい。私たちはまだ、引き返せるのだから。


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