• X
  • facebook
  • line

【8月16日付編集日記】それにもかかわらず

08/16 08:05

 はた目には唐突に映った決断も、熟慮の末か。深謀遠慮があって船出したはずが、いつの間にやら独断専行が目立ち始め、気づいたら四面楚歌(そか)。岸田文雄首相がお盆のさなか、自民党総裁選に出馬しないと表明した

 ▼政治と金を巡り地に落ちた信頼の回復へ、今度こそオール自民党で取り組んでもらいたいと新総裁に託した。裏返せば、派閥力学に振り回された党への恨み節にも聞こえる。改正政治資金規正法の制度設計は道半ば。看板を替えただけでは、そっぽを向かれる

 ▼政治家の資質に関し、ドイツの社会学者、マックス・ウェーバーは、どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への「天職」を持つ―と語っている(「職業としての政治」岩波文庫)

 ▼東大学長を務めた佐々木毅さんが、この本をテキストの一つに使い政治家と読書会を開いたことがある。その際に彼らの琴線に触れ、会が最も盛り上がったのがこのくだりだったという。同書の解説で紹介している

 ▼後継者レースも熱を帯びてくる。政治的な策略や思惑に翻弄(ほんろう)されてもなお「それにもかかわらず」と、国民本位の政治を貫くリーダーの登場を待ちたい。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line