• X
  • facebook
  • line

【8月23日付編集日記】名山

08/23 07:55

 文筆家の深田久弥さんが随筆集「日本百名山」を出したのは、1964年の夏だった。それから60年。深田さんが自ら選んだ百名山の文化や自然、登山の過程をつづった同書は今も愛され続けている

 ▼実は名山の選出は、昔から行われてきた。本県ゆかりの人物が選んだ名山のリストもある。白河藩主、松平定信に仕えた江戸時代の画家、谷文晁(ぶんちょう)は、名山89座の風景を描いた画集「日本名山図会」を残した

 ▼文晁は実際に全国を旅した。そのためか選定リストは個性的で、他の書画では選ばれていない山々を多く選んだ。県内では、安達太良山と会津磐梯山、半田山がそれに入る(新海祥子ほか「『日本名山図会』にみる谷文晁の名山観」)

 ▼二十四節気の一つ処暑に入った。暦の上では、暑さが落ち着く頃という。猛暑を避け野外活動を控えていた人も、行楽の秋に向け登山の計画を考え始める頃かもしれない

 ▼百名山の踏破を目指し遠征もいい。だが、文晁に倣い麓から眺めるのも山の楽しみ。画家がほれた立ち姿の美を実感できるかもしれない。そして深田さんも多分、山の姿に感動したはずだ。文晁が見いだした安達太良山と磐梯山は時を経て、深田さんの百名山にも選ばれている。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line