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【8月23日付社説】自民党総裁選/刷新感だけで終わらせるな

08/23 08:00

 内憂外患の状況にあるこの国をどう導くのか。その覚悟と具体的な政策を国民に示し、活発な論戦を繰り広げてもらいたい。

 自民党総裁選の日程が9月12日告示、同27日投開票に決まった。選挙期間は1995年に現行の総裁公選規程が設けられてから最長の15日間となる。立憲民主党の代表選日程を踏まえ、それより遅く選挙期間を設定し、自民がより目立つように意識したとみられる。

 総裁選で刷新感を打ち出し、来たるべき総選挙の勝利につなげようという思惑が透けて見える。しかし、選挙のための「新しい顔」を選ぶ人気投票で終われば、党の信頼回復は遠のくだろう。

 総裁選は、党所属の国会議員と党員・党友の投票で決まる。新総裁が次期首相に就任するのは確実で、事実上、新しい日本のリーダーを選ぶ大切な選挙だ。そのことを党所属の国会議員、党員・党友は認識し、選挙戦に臨むべきだ。

 総裁選の最大の焦点は、派閥のパーティー裏金事件に象徴される党内の金権体質をどう改革していくかだ。裏金事件の全容解明は不十分なままで、先の国会で改正政治資金規正法が成立したものの、抜け穴だらけとの指摘が根強い。領収書の10年後公開を検討するとした政策活動費も、透明性を高める具体策は固まっていない。

 各候補者は「政治とカネ」の問題にどう向き合い、金権体質と決別するのか。その道筋や具体策を明確に示す必要がある。

 これまで当選4回の小林鷹之前経済安全保障担当相が立候補を表明し、小泉進次郎元環境相も出馬の意向を固めた。このほか高市早苗経済安保相、茂木敏充幹事長、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相らが立候補を検討している。

 世代交代を目指す中堅・若手、経験が豊富なベテランなど多様な顔ぶれだが、その政治信条や人物像はよく知られていない。リーダーにふさわしい品位や見識、指導力を備えているか、私たちが見極める機会とすることが大切だ。

 従来の総裁選は、派閥の領袖が候補者となり、推薦人の選定なども派閥主導で行われてきた。今回は裏金事件を発端に、麻生派以外の派閥が解散したことでその縛りは弱まったとみられるが、推薦人の確保などは旧派閥の議員同士による動きが中心となっている。

 これまで自民党は、派閥の解消と復活を繰り返してきた。今後の集票活動、総裁選後の人事などで派閥の力学が再び働くようになる可能性もある。派閥解消が見せかけだけのものか、国民が注視していることを肝に銘じてほしい。

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