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【8月25日付編集日記】自分自身との出会い

08/25 08:00

 画家の岡本太郎は人の絵を見ても感動することはめったになかった。しかし、一度琴線に触れてしまうと涙が出たり、体が熱くなったりしたという

 ▼ピカソの静物画を見たときもそうだったらしい。「ピカソをナマの眼で見て、ほんとにそれが自分じゃないかって感じがした」と振り返っている(若松英輔「自分の人生に出会うために必要ないくつかのこと」亜紀書房)。芸術作品を深く見るのは、それを通して自分自身を見つめることにつながるということだろう

 ▼吉永小百合さんが、三春町出身の登山家、田部井淳子さんの生涯を描いた映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」に主演する。登山家役は初めて。数々の山を制覇したパワフルな田部井さんを、静ひつなイメージの吉永さんが演じることには正直驚いた

 ▼吉永さんは演じる役が決まると、その人の故郷を訪ね歩くなどして徹底的に調べるようにしている。その人のルーツを知らなければ演じられないとの思いがあるという

 ▼対談で意気投合したこともあった田部井さんの生きざまを改めて知るのは、彼女を通じ自身を見つめることでもあったに違いない。銀幕では私たちの知らない2人に出会えるはず。公開が待ち遠しい。

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