• X
  • facebook
  • line

コメ品薄、もう少し我慢 福島県内、新米流通…9月中旬にも

08/30 07:30

完売し空となったコメの商品棚=川俣町・ファンズ川俣店

 コメの品薄が深刻化している。小売店では在庫がなくなり、陳列されてもすぐに売り切れとなる状況。コメ以外の主食への切り替えで対応する動きもみられる。流通は9月中旬ごろから安定する見通しだが、不足時期を乗り越えるための対策が求められている。

 購入制限の張り紙

 川俣町のスーパー「ファンズ川俣店」。28日は陳列棚に半数ほど並べることができたが、夕方には空となった。「2、3日前にはあったのに」。買い物に訪れた主婦の酒井芳枝さん(60)は驚きの表情。小売店を4軒巡っても買えなかったという親族もいたという。

 昨夏の猛暑による品質悪化やインバウンド(訪日客)需要の高まりを背景に顕在化するコメ不足。店では、購入できたコメを知人に送るため、宅配便の手続きをする客の姿もみられた。購入数を制限する紙を張らざるを得ない状況に、佐藤昌樹店長(35)は「お客さまに申し訳ない」と肩を落とす。

 「収穫期までの1カ月をしのげるだろうか」。会津若松市の小売業石本米穀店の石本信雄さん(77)もため息をつく。卸業者から仕入れた県産米を全国に発送しているが、8月の初めには在庫がほぼなくなった。顧客から問い合わせの電話が相次いでおり、「心苦しいが在庫がないと答えるしかない」。備蓄米の放出について慎重姿勢を崩さない政府に「消費者には明日の生活が懸かっている。いますぐに放出するべきだ」と訴えた。

 子ども食堂などを運営する金の雫(本宮市)では、コメの支援が減り、ここ数カ月はコメを使った料理は提供できていない。乾麺やレトルト食品などで何とかやりくりしている。影響が危惧される病院などの流通網は確保されているようで、ある福島市の病院担当者は「病院食は通常通り提供できている」とした。

 東北農政局「一定量確保できる」

 東北農政局県拠点によると、県内では主要品種のひとめぼれや天のつぶは例年より3~4日ほど早い9月10日ごろから刈り取りが始まり、9月中旬ごろから流通する見通し。生育状況は「平年並み」で、現時点で昨年のような高温障害は報告されていないという。担当者は「刈り取りを終えれば一定の量は確保できるので、慌てずに購入してほしい」と、流通が始まっても買い占めなどに走らないよう呼びかける。

 ただ、コメの価格の高騰状況に対しても不安の声が聞こえる。不足解消までの時期をしのぐため、いわき市の卸売・小売業「相馬屋」では例年なら9月下旬に店頭に並べるはずのわせ種の新米を前倒しで販売するが、仕入れ値が高く例年より割高にせざるを得ない状況という。佐藤守利社長(66)は県産の主力品種の来月以降の仕入れ値についても「全く予想がつかない」とし、今後の状況は「次回の作況指数の発表を受けてJAや卸業者がどう反応するかで変わる」と語った。



この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line