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【環境考察/農業新時代】県産モモ、品種開発進む 「熱い」時期逃さない

08/30 09:00

収穫期などにこだわり、県農業総合センター果樹研究所で育てられている「モモ福島19号」=8月、福島市

 「お盆がモモの需要のピーク。そのときに出るモモは重要だ」。福島市で3代にわたって果樹を育てる黒沢隼人(29)は強調する。厳しい暑さが残るお盆は、果樹農家にとっても”熱い”時期だ。

 ■お盆を収穫適期に

 県内ではモモの収穫期になると、「はつひめ」「暁星」「まどか」などの品種が間隔を空けずに次々と出荷される。これまで、お盆の時期に当たるのが「あかつき」とされてきた。県を代表するオリジナルブランドで、実が大きく、甘みが強いのが特徴。「あかつきを楽しみにしている帰省客もいる」と黒沢は話す。

 ところが、近年は気温上昇の影響もあり、あかつきの収穫期が早まっている。県農業総合センター果樹研究所(福島市)によると、1976~85年の平均収穫期は8月10日だったが、2016~23年は7月27日。10日以上早くなった。「お盆前にあかつきが終わってしまう。お盆に合わせて収穫でき、あかつき同様に実が大きくて糖度の高いものがあるとありがたい」と黒沢は望む。

 農家の声などを受け、研究所はあかつきの後に収穫できる品種の開発を進めている。試行錯誤を繰り返し、現在は「モモ福島18号」「モモ福島19号」の2種類が候補として残った。

 18号、19号ともに収穫期はあかつきより10日~2週間程度遅い。今年は主に7月中旬~下旬にあかつきが収穫され、研究所で育てられている18号と19号は8月上旬に収穫の「適期」を迎えた。収穫期に加え、重視したのは▽大きさ▽色▽味―の3点。特に味を重視しており「18号は理想的な食味を有していてジューシー。19号は甘みが強く、きれいな丸い形をしている」と栽培科長の岡田初彦(57)は手応えを口にする。

 ■あかつき超え意欲

 品種登録に向け、研究所は育種を続けている。あかつきは数あるモモの品種の中でもトップクラスとされ、全国でも多く栽培されている。その後に収穫する品種となるため、担当する専門員の佐久間宣昭(62)は「あかつきを超えるものにしたい」と意欲を燃やす。

 気温上昇を受け、今年もモモの収穫期は早まっている。それだけに新品種に期待する声は大きい。「農家にとっていいものにしたい」と佐久間。所長の志村浩雄(60)は「品質と慎重に向き合った上で、スピード感を持ち、生産者に自信を持って作ってもらえる品種にしたい」と言葉に力を込めた。(文中敬称略)

  ◇

 あかつき 県が30年近くにわたって研究を重ねて独自に開発し、1979年に品種登録された。糖度が高く、酸味が少ないといわれている。品質はトップクラスとされ、2007年には全国で最も栽培される品種となった。

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