誰もが認め合う「共生社会の実現」を目標に掲げる障害者スポーツの祭典、パラリンピック・パリ大会が開幕した。競技に臨む選手らへの応援を通じ、障害者と健常者が尊重し合っていくことの大切さを考える機会としたい。
県勢では、東京大会で銅メダルの車いすラグビーで前大会も出場した橋本勝也選手(三春町出身)が代表入りし、金メダルを目指している。陸上の女子400メートル(視覚障害T13)に2大会連続出場の佐々木真菜(福島市出身)、女子砲丸投げ(上肢障害F46)に斎藤由希子(福島市)の両選手が出場する。初出場の斎藤選手は5月の世界選手権で銅メダルを獲得しており、好成績が望めそうだ。
女子車いすバスケットボールには石川優衣(郡山市生まれ)、ボッチャの個人戦と団体戦には、女子脳性まひBC1クラスの遠藤裕美(福島市出身)、柔道女子48キロ級(全盲)に4大会連続となる半谷静香(いわき市出身)の各選手が出場する。
各選手がパリの大舞台で存分に力を発揮できるよう、本県からもエールを送りたい。
パラリンピックを通じて期待されることの一つが、障害者スポーツの活性化だ。
共同通信社の全国の自治体首長アンケートによると、3年前の東京大会を経て共生社会の実現や多様性の尊重に向けた取り組みが進んだかどうかとの質問に「進んだ」「どちらかといえば進んだ」との回答は全国で73%と高い値となった。ただ、障害者スポーツの普及に向けては、体験の機会や情報発信、障害者の利用しやすい施設整備などの必要性を指摘する意見が多かった。
県内では小学校などで障害者スポーツを体験する機会などが設けられているものの、車いすを使った球技などの認知度は、五輪競技などと比べ、まだまだ低いのが現実だ。県勢の活躍が障害者スポーツへの関心や環境整備の機運醸成につながることを期待したい。
パリ五輪では、交流サイト(SNS)での誹謗(ひぼう)中傷で、選手らを傷つける事態が相次いだ。こうした行為は、全力を費やして出場権を得た選手らの努力を不当におとしめる行為であり、パラリンピックでも許されるものではない。
パラリンピックでの選手らの活躍は、障害を越えて奮闘する姿を通じ、障害者だけではなく、健常者にも希望を与えてくれる。その貴重な機会を中傷で汚し、本来注目されるべき選手らの努力から関心がそれてしまうようなことは避けなければならない。