道路は、車のためだけでも、歩行者のためだけのものではない。互いが相手に配慮しながら行動することで、悲惨な事故を減らしていきたい。
「反射材 光って気づいて 事故防止」をスローガンに掲げる秋の全国交通安全運動がスタートした。秋から冬にかけて日没の時間が次第に早まり、深刻な事故の起きやすい夜の時間帯が長くなる。運動を事故に遭わないための注意点を確認する機会としたい。
県警によると、今年に入って、夜間に発生した事故で亡くなった歩行者は19日現在で8人に上る。歩行者が犠牲となる死亡事故の6割が夜間の発生だ。
歩行者に気を付けてもらいたいのは、スローガンに盛り込まれた反射材着用の徹底だ。反射材を身に着けているだけで、事故に巻き込まれる恐れは大幅に軽減される。しかし、県警の実態調査によると、反射材の着用率は4割で、世代を問わず浸透が進んでいない。夜間の事故で亡くなるケースが多い高齢者でも着用率は5割にとどまっている。
歩行者側が機敏に動ける年代であっても、車に発見されるのが遅れれば、事故が発生してしまう恐れは高まる。夜間にウオーキングしている人は反射材のほか、懐中電灯を持っていることが多い。これは自身の視界の確保に加えて、車に早く発見してもらうことにも役立つためだ。夜間に徒歩で外出する人は、自身自身の安全が確保できるよう、必要な準備を徹底してほしい。
夜間の外出を避け、昼間に用事を済ますことも、事故防止対策の一つとなる。
夜に運転するドライバーに求められるのは、歩行者を早期発見し、その動きに注意しながら走行することに尽きる。そのために有効なのがハイビームだ。
ハイビームは、ロービームより約60メートル長い約100メートル先まで見通せるため、ドライバーが歩行者などを早く見つけることができる。歩行者にも車の存在を気付いてもらいやすくなるため、事故の恐れも軽減される。
市街地などでは、前を走る車や対向車のドライバーに配慮して、ロービーム主体で運転することがどうしても多くなる。しかし、道交法では夜間にはハイビームでの走行が定められている。ロービームが基本ではないということだ。見通しが悪くなったらハイビームに切り替えるというのではなく、市街地などでは必要に応じてロービームを使用すると発想を転換してもらいたい。